ガラス工房 彩グラススタジオ ガラス教室(吹きガラス/ガラス細工/ガラス工芸/バーナーワーク/耐熱ガラス/トンボ玉)ガラス体験 ガラス制作

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に ぬ ね の
は ひ ふ へ ほ ま み む め も や ゆ よ ら り る れ ろ わ
彩の講座生の皆さんへ 伊藤の経験的吹き辞典?ほとんど脱線ぎみですが、分かりやすい基礎知識をと。

アイスクラック
ガラスが暖かいうちにごく短時間水に突っ込むと表面だけひび割れます。ずっと水に浸してしまうと本当に割れてしまいますから注意してください。民芸ガラスなどでは昔から多用する技法です。陶器でなら貫入みたい感じ。水に一回だけ入れたり、何回も入れたり、ガラスが暖かい時に入れたり、やや冷えている時に入れたりとそれぞれにひび割れ方も違うので表情を変えることも出来ます。伊藤はエアガンで空気を入れますが吹いても勿論大丈夫です。どうなるかは皆さんでいろいろ実験してみてください。ポンテ後に器の内側にアイスクラックさせる荒業もあります。
これだけではもの足りないので、いろいろなテクと複合させると面白いものが出来るかもしれません。

アシスタント

吹きガラスでは通常、助手がいてタネを持っていってあげたり、ポンテしたりと共同作業的になります。アシスタントが優秀かどうかは作品の出来ばえに大きな影響を与えます。吹き手の技量が乏しい場合、アシスタント頼みになりがち。それで失敗が続くとアシスタントのせいにしがちですが、本来アシスタントにどう指示をだすかはあくまで吹き手本人の責務です。アシスタントを育てていけるかも仕事のうち。そこをはっきり自覚することがプロとしてはとても大事なこと。
講座生ではお互い遠慮もありますが、アシストの時は自分が吹いてるような気持ちになってお手伝いしましょう。アシストとして大事なのはタイミングのとり方。相手を待たせないように先回りして準備しておきます。その為には相手が何をつくるのかというコミュニケーションは必要。勿論タネが綺麗に巻けることも練習しないとですが。いい作品のためには面倒でもアシスタントにやり直させることも必要です。
実は助手が人としての思いやりがあるかどうかはすぐに伝わってくる。ヘタでも嬉しくなるアシストもあるんです。そこが単なる技術やお金ではない人間性の出てしまう難しいところ。

作家のなかには完全に一人で吹く人は実は多い。他人と顔を合わせてるのが面倒とか、雇う金がないとかが理由ですが(精神衛生上はすごくいいにしても)作れる作品に自ずと限界があるのは事実。伊藤の場合、制作に造形上の制約があることは我慢ならないので、窯を始めた22年前から安定的に雇うことで最低限はきっちりと助手してもらうというスタイルです。昔は手塩にかけてアシスタントを育てて、育った頃にいなくなりの繰り返しで悩みは尽きなかったけど、最近は少しは学習して過剰な期待はしなくなりました。伊藤も円くなった。それも少しさびしい気もしますがこればかりはしょうがない。一応、彩みたいにとりあえず助手してくれるスタッフがいてくれるだけでもありがたいと思うようになった。


ガラスに穴をあけることは、かなりの頻度で必要なこと。いろいろな方法があります。
吹き破るテクとしては、部分的に酸素バーナーなどで高温にして、吹き破ることがあります。穴が開くとき、ポンッといい音します。吹きの場合だいたい1cmくらいの穴が開きます。ただし一ヶ所しか開けられない。また、熱いタネを付けて吹き破る方法もありますが、これは一般的ではありません。他には道具を使って開ける方法。穴あけ専用の道具を自作するといいと思います(彩で吹いておられる鉄工職人の田中さんの自作道具はすごいです。ポンテ後のお鉢も一発でパスパス穴が開いていく。素人じゃ刃物は作れないし、お願いだからいつか販売してもらいたい)。何も道具がない時はピンサーでグリグリして開ける。すこし惨め。(伊藤はその場合反対側に径の小さな鉄パイプをあててピンサーを押し込んだりもします)。また電動ドリルでグリグリやる激しい方法もあります。細い穴ですとタングステンを真っ赤に熱してガラスに押し込む方法もあります。耐熱ガラスの分野では当たり前のようにやってますが、この方法は元々関西方面の大学の先生が開発した方法らしいです。後加工で穴をあけるのは大変。ダイヤモンドのリュータや専用の高価な機械でガラスが割れないように注意しながら掘っていきます。大きな穴ならサンドブラストだといいかも。ビニールがもたないので2重にしたりします。後加工は神経を使うし、なるべくならやりたくないよね。


アベンチュリン(色ガラス)
色ガラスの中でキラキラと金属片が光ってるやつ。緑が一般的。溶解するのに本来より大量のクロムが入ると特定の温度管理や還元状態で析出したクロム片がキラキラします。クロムは元々熔けにくい元素でして失敗して黒ブツ(ただのゴミが入ってるみたいな)となります。以前はそんなこともありました。涙。他に銅アベンチュリン(レンガ色のやつ、砂金石ともいいます)やブルーのも(調合は良く分かりませんが)見たことがあります。クーグラーなどで販売してます。他の色より高めですが。使うと妖しいマダム風な作品になる(伊藤の主観です)

ベネチアングラス-アボリオアボリオ
アメリカではここ7年くらいの間にアボリ細いのが流行みたい。というかどこまで繊細に出来るか競い合ってる感じ。5月のモングレインさんなんか超細くてやや長め。見た目には確かにすごくカッコイイ。でも乾杯すると割れるそう。作家によって微妙に形が違うので、モングレインさんはアボリで誰のゴブレットか分かるらしい。まるっきりオタクだね。アメリカ人にイタテク教えたリノさんなんかは普通のサイズですが、本来実用を考えたらある程度の太さは必要じゃないかなと。
アボリは吹きの腕がばれてしまうパーツだし、センターにこないといろいろゆがみが出てめんどうなことになる。びしっといきたいよね。
なかなかセンターに丸く付かないとお悩みの方多いですけど、伊藤が見る限りとにかく竿回ってないです。特にあの三角形にする時いきなりドカッと強く押さないように、最初はやさしく、でも竿は早く回してないと丸くならないです。遠心力がかかると抵抗が増えてやりやすいはず。これは昔ダンテのワークショップで気づいたことでした(けっして口で教えてはくれないです)。でもモングレインさんはそうでもなさそうなのに出来てるのはちょっと不思議。どうしても竿が回らないという方はなるべく細い竿を使うといいかも。伊藤はベネチアンの時は14ミリのパイプをお勧めしてます。
あと、タネは冷やさないようにすばやく成形しないとダメ。巻きつけたらポンポン底を叩いて平らにしていきますが、(叩くのは3〜4回くらいで済ませてね)ハシの背でべっとり触るとタネ冷えちゃうから注意。他にも沢山コツはありますが、書いてると膨大な量になってしまうので後は講座でやりましょう。
最後に本体がセンター取れてない人はアボリ以前の状態だから。
今回の基本の一言
何事もハシなどの道具で形を作る時
所詮一方向から押し付けているにすぎないので、あくまで竿が回転することで均一に丸くなる。

アルミナ
酸化アルミニウム。硬く、超高温にも耐える素材です。研削用に、棚板の離型剤としてや、耐火物の主原料となります。ガラス中にごく少量含まれると耐久性が著しく高まります。


ガラスに気泡を入れるテクニックについて書きます。たくさんあるからいろいろ試してみてね。
吹きのテクニックが必要というより、経験だけだから誰でも楽しめるはず。
代表的なのは重曹(その辺のスーパーや薬局で売ってるの)をガラスに付けて上ダネを巻くやり方。
予め重曹を水に溶いておく方法もあります。しゅっしゅしたり、直接漬けたり。重曹を直接付けるなら、粒子の粗い、安っぽい?やつの方がべたっと付いたりしないので伊藤はお勧め。少しでも多すぎるとぶくぶくに発泡しますので、それは大注意。一般的にはマーバーの上にパラパラふっておいてガラスを転がします。直接ふりかけてもいいですが。付けてからダルマで焼くと発泡は少なくなります。誰だったか講座生がから揚げに使おうとしたアジシオをふりかけてましたが、それでも発泡した。まだ笑えるようなものあるかも。誰か実験してみて。気をつけて欲しいのは、ポットの中に泡を残してこないこと。次に巻く人が悲惨な思いになりますから注意してね。
次に多いやり方は、水泡(誰が言い出したか知らない)。助手が吹いたガラスを持ってきてグルグル巻きつける方法です。大きなダイナミックな泡になります。あらかじめ内被せしてあると色の泡になってオシャレ。
次はガラスを凹ませて、上タネを巻く方法。一番当たり前な方法?パイナップルモールドや剣山、ハシなどで凹ませる。エアツイストはシャープだし、テクニックも面白いし伊藤が唯一好きな泡の技法です。
その他には吹いたガラスをそのまま閉じ込める方法やアイスクラックを利用する方法、真鍮の細線を使って黄色い泡を作る方法、パートドベールをピックアップして吹きに使う方法、サンドやカットしておいてピックアップして上ダネを巻くなどなどいろいろ。民芸ガラスなんか元から泡切れしていないガラスで巻くから何でもアワアワなんて究極の方法もあります。伊藤もガラス自体を超ぶくぶくにしておいてパットミドベール(洒落たネーミングやね)なる新技法をあみ出しましたが、馬鹿馬鹿しくてその後一度もやったことがない。
伊藤が思うに薄い作品だとボコボコし易いので美しくない。あえて肉厚か、無垢の作品じゃないと泡の立体感が出ないので綺麗じゃないと考えてます。器では民芸的な素朴な味わいを目指す方にお勧めの技法かと。これ以上聞きたい時は工房でいつでも伊藤に質問ちょうだい。普段は泡の作品は作らないのですが、それでも少々アドバイス出来ると思います。


泡巻き

原料(バッチといいます)投入してガラスを煮あげたら、翌日の朝には泡巻き(泡抜きとも言ってる)という作業があります、これはまだガラスに泡が沢山あって、それを取り除かないと吹きにならないので必要な作業です。まず窯の温度をなるべく下げていきます。その時ガラス中の泡が消え、表面にだけ残ります。ある程度冷えてきたら、水をガラス表面にたらしても効果的に泡が消えます。それでもガラス表面に泡が残っていたら人力で掬い取ります。けっこう汗だく。その後作業温度にまで急速に温度を上げ、しばらく待ちます。この過程で残ってる泡もまた消えていきます。最後に作業前の最終確認します。注意することは1250度くらいになると再沸して、またガラス中の泡が出てくることです。これは彩という時間に余裕のない工房の、伊藤の独学経験的な方法ですが、工房によってはまだ違うやり方もあるかもしれませんし、より効果的な方法もあるかと思います。あったら教えてほしいです。


イリオジン
色付き雲母。パール系やゴールド、銅、などお手軽に金属的な光沢がだせる優れもの。ただし使い方にはコツがあります。まず沢山のイリオジンをボールなどに入れ、フワフワさせておきます。圧縮された感じだとダメ。次にガラスの温度が低いと定着しないので注意。付けた後はハシをかけるとハシキズになってしまうので、紙リンで成形するしかありません。ポンテはすごく落ちやすくなりますから、これも大注意。高温にしすぎると消えてしまいます。金のイリオジンなどはよく見ないと本物と勘違いするほどですので、かなり経済的かと。最近は伊藤の普及活動のせいもあってか?全国的にイリオジンの作品を見るようになりました。

インカルモ
インカルモは俗称カップリングなんていってたりする(でも外人には通用しないですけど)。径を合わせた筒を合体させて上下で分割した柄にするテク。通常は一方を助手にキープしてもらって、お互い先端だけをあっためて合体。その後なじませてさらに吹いていきます。
気をつけてもらいたいのは、接合部の肉厚。薄くなりすぎるとヘコヘコになったりします。それが怖くて超肉厚で合することもありがちですが、それはあまりインカルモの良さがないような気もします。元々薄手にものを段差を残したまま作れるかが美しさのポイントだとはムラノの職人ジョルジョさんの意見。ポンテ前にやる方法もポンテ後にやる方法もあって、デザインで使い分けします。伊藤はポンテ後にやることがほとんどです。このテクはそれ自体ではつまらないので、他の様々なテクと組み合わせて効果が生きるものです。
いろんな応用の仕方があって、最初からイカリングフライのような沢山のパーツを重ねていく人もいるし、口巻きをしたり、ポンテを90度方向に付け替えて縦割りにしたりといろいろ楽しめます。ちょっと面倒ですが想像するより案外簡単なので、初心者は無理としても数年やってこられた方ならトライしてみては?


インプラント
とりあえず薄めの肉厚でガラスを吹いておき、熱いたねを付けたり部分的に暖めたりして、道具などで押し込むことでガラスを内側にめり込ませるテクです。細い鉄棒などで押し込むと尖ったものになるし、パドルなどでもかまわないし、いろいろデザインで工夫します。伊藤は昔よくやりましたが、他にはあまりやっている作家は見たことがないからぴんとこないかな?

色ガラス
ガラスは透明が基本ですが、それに様々な鉱物(酸化金属)を加えることで様々な色を作り出します。例えば一番一般的なのはコバルト。ごく少量でブルーに発色しますので経済的です。青でしたら銅も一般的。軽い感じです。特定の鉱物を入れると、ガラスにもその性質が現れるので、例えばねばりのある金属(鉛、金、銀)などはガラスもねばります。伊藤のような素人に発色の難しいのは、とにかく赤。赤は金、銅、セレンでしか出せません。赤紫?でしたらマンガンやエルビウム、ネオジムなど。などとゴチャゴチャいくらでも書けますが限がないので止めときます。こんなことはガラス工学の本にいくらでも載ってるし、発色は科学的に実証されていますから(昔のあの色は現代では不可能とか、何とかの石や灰が混入すると不思議な色が出るなんて能書きを骨董屋か同業者にうっかり信じ込まされないように。特定の鉱物を色味に合わせて調合すれば済むことです。ガラスに付加価値付けることでなんとか売りたいという邪念に負けてしまう作家も多い。陶芸作家の悪影響かも)、彩図書コーナーで勉強しましょう。
伊藤の考え方としては自分で調合する作家以外は市販の色ガラスを好きなだけ使うだけでいいと思ってます。画家が絵の具の成分調合のこと知らなくても絵は描けるようにガラス作家もデザインこそもっと考えるべき。ただ色を使う時、この色は柔らかい色か硬い色かぐらいは経験的に覚えていってほしいです。それと、色彩学の一番基本的な知識は色を扱う以上必要かと。もう一つ付け加えるなら、どんな色を組合わせたらいいのか分からんと質問されたりしますが、そんなこと聞かないで欲しい。色は感覚的なもの。自分の好みでいい。それでも思いつかないなら例えばファション雑誌でカッコイイ服見つけたらなら、それを真似ればいいだけ。



内被せ
吹きガラスでは色のつけ方として基本になるテクです。市販のカラーロッドを割って余熱しておき(500度くらい)、竿先に付けて(まだロッドが充分あったまってないと割れたりします)少しだけ吹き、上タネを巻いていきます。慣れると簡単な作業ですが、初心者ですと色の濃さを均等に吹くことさえ難しい。ほとんどの工房は色ガラスが溶けてないので、内被せは多用しますから必ず覚えましょう。
伊藤は普段はロッドをダイレクトに竿に付けることが多いですが(色ガラスの無駄が少ないのと肉周りをコントロールしやすいので)、大きなロッドですと少量のスキを付けてけてからにします(スキには穴が開けてあります)。色を何段も重ねたり、何色も付けてマーブルにしたりと内被せだけでも出来ることはたくさんあります。色を合わせる時注意することは、色の硬さの違い(鉛が入ってる色は柔らかく、そうでない色は硬くなる)による片肉、と黒化(鉛と硫黄が反応して黒くなる現象。色ガラスを使う時の基本だから忘れないように。上手く利用出来ればそれはそれで面白いものができますが)。


ウッドジャック(道具)
先が木になっているハシです。材質は桜や樫の木など硬くて燃えにくいもの。自分の好みの形に削ったりして使用します。お鉢や皿などを作る時に主に使用しますが、ハシ傷をつけたくない人はタンブラーなどでも使用しています。紙ごては一本ですが、これは(当然ながら)二本で作業できますのでより楽チンです。テフロンほどシナシナしないし、グラファイトみたいにカチカチでもないので一番やりやすいかも。使わない時は水に漬けておくと長持ちします。基本的にかなり消耗品なので多用する人は自分専用の道具としてください。外被せなど高温にして作業するテクの場合、すぐに燃えて磨耗してしまいますので注意。その場合、グラファイトジャックがお勧めです。彩では外被せに使用して一発でだめにしてしまう人が多かったので、工房には置かなくなりました。かといってグラファイトも毎日のように折られてしまい(高いんだから)、今は常備してるのはテフロンだけになっちゃいました。刃物系や消耗系の道具は基本的に個人的な道具。初心者でなくなったらマイ道具の購入をお勧めします。ジムムーアとかエッセムとかいろんなところで販売してます。

ウッドブロック(道具)
ガラスの形を整えるのに多くの場合、紙りんを使いますが、紙カスが付きやすいし技術も必要なのでウッドブロックを使うことがあります。特に外国の作家は紙りんの苦手な人が多いので多用しているようです。桜の木など硬く燃えにくい種類の木を卵型に半円状くりぬいてあって、そのままガラスにあてるだけ。早くてラクチンで失敗もなくすばらしいのですが、くりぬいた形にしかならないので紙りんのように応用はききません。レンタラーの皆さんなんかは紙カスに苦労されてる方も多いので、いっそウッドブロックにした方がいいかもしれません。特に15キロ以上になるような大物の作品の場合、熱くないし、形がすぐにまとまるので便利そう。2本のアームのあるウッドブロックを二人で両側から持ち上げて大作を制作しているイタリアの作家を見たことがあります。大きいと片手じゃ持てないし。
使用しない時も水に浸しておきます。そのまま放置しておくと、ボウフラが湧いたり、水が腐って臭くなってきたりとたまらないので、毎日水は交換しましょう。エッセムなどでいろんな大きさのウッドブロックを販売してます。


腕カバー
大きな作品ですと腕が熱くて作業出来ません。それで腕カバーします。燃えにくい綿とか例の黄色なハイテク素材とかが多いです。化繊だとすぐ燃えちゃいますから、ダメ。伊藤は軍足のゴムが伸びきったやつの一方を切って使用してます。汗でぐちゃぐちゃになりますから、洗濯しないとです。気が付くと腕カバーが燃えてたりなんて、いつもの事です。

ウランガラス
ブラックライトを当てると、ボーと光るガラス。一見は薄い黄緑色のガラスです。19世紀にボヘミアで開発され、世界中で生産されました。日本のは、大正から昭和にかけて製造されたもの。骨董屋さんなんかで売ってたりします。ロッドで販売してるのも見たことがあります。放射能は人体に影響がでるレベルではないそうですが、なんか怖い気もする。プルトニウムなんか溶かしたら、どんな色になるんだろ?六ヶ所村の放射性廃棄物処理場なんかでどうせガラス固化するわけだし、実験してみないのかなーとは、少し怖いもの見たさです。
他に蓄光剤(時計の文字盤が光ってたりするやつ。光を強く受けると発光しますが、強く発光するのは短時間だけで、その後弱まってきます。放射能は出ませんので安全)なんかをガラスに熔かし込むことも出来ます。真っ暗なお部屋でグラスがボーと光って二人は盛り上がり・・・なんて想像してますが、なんか変。

雲母(素材)
ガラスに異素材を溶着させるテクは沢山ありますが、今回は雲母についてです。
本来離型剤としても使えるほどでガラスとはなじみがいいとは言えませんが、手軽にキラキラさせられるし、比較的安価なので、吹きガラスでは多用されています。粒度は様々あって表現で使い分けます。荒いと魚の鱗のようだし(伊藤は好きじゃない)、すごく細かいとだんだんに酸のつや消しのようにマットな感じになっていきます。ある程度ガラスが高温でないと溶着しないので注意。特に表面に出てる時はポンテがストンと落ちたりしやすい(離型剤みたいもんだから)。逆にそれを利用して雲母ポンテをつくれば上手くするとポンテ跡がないくらいに綺麗に落ちます。これは作品が作業中に落ちやすいということでもありますから初心者の方は止めた方がいいかも。後、ガラス表面にある時は異常にハシの消耗が激しくなる(雲母が硬いので)し、作品にハシ傷がつき易いので注意。使い方は簡単。柔らかいガラスを雲母の上で転がすだけ。溶けたりしないので銀箔よりはるかにテクがいらないです。通常は上ダネを巻きます。なぜか雲母が散ってると和風な趣のある器となります(銀箔と少しだけ似ていますが)。つや消しのガラスに雲母が散ってるのとか(和の器シリーズとかなんとかで)ガラスメーカーもののいつものパターン。雲母は画材屋さんとかに行けば売ってます。誰でも出来ると思うので一度くらい試してみてはいかがかと。



エアツイスト
歴史的に代表作はワイングラスのあしの部分などに、空気が螺旋状になって入っているものです。彩で教えているガラスを凹ます方法は昔、彩で講師をしてくれたマイケルさんの伝授してくれた方法です。それを伊藤なりに改良?したのが今のスタイル。すばやく高温で作業する訓練として、とてもいいのでBコースでも最初にトライします。ワイングラスは当然ですが、応用すれば花瓶やオブジェでもいけそう。ブローパイプでやるタイプもあって、それだとエアツイストのレース棒なども作れる(ただし、それで器を吹くのはかなり難しいです。焼きすぎるととエアが切れてしまうので)し、昔リノさんが作ってた本体自体がエアツイスト状態になっているもの(ドリンクしたらえらいことになりますが)も作れます。技術的にはそれなりに難易度の高いものなので初心者にはお勧めしません。

エアガン(道具)
部分的にガラスを冷やす時に必要なもの。コンプレッサーに綱いてシュッシュします。コンプレッサーの圧力はさほど必要ありません。昔ドライヤーでも試してみてたけど、パワーなかった。注意して欲しいのは冷えたガラスに無理やりブローしたくてエアガンで吹き竿につなぐ人いますが、ガラスが爆発する事故が数件ありました。顔を縫う怪我をしてしまったお嬢さんもいました。大怪我の元ですから、絶対マネしないようにお願い致します。

エッセム(道具屋)
スウェーデンの道具屋さんで、タネきりから加工関係のマシーンも製作するメーカーです。吹きの道具は特別性能がいいわけではないのですが、伊藤はここの道具を主に使ってます。理由はとにかく安いのと、事務がちゃんとしてて早く送ってくれるから(まともな所って案外少ないんだよ)。イタリアやアメリカの道具屋さんなんかはいつになったら届くの?ということが多いです。お勧めは(安いということを前提にしてなら)タネきりとグラファイトジャック、鋏、ウッドブロックです。ダメなのはジャック、ピンサー、台広げ(ちゃんと使える人がいるとはあまり聞いたことがない)鋏類などは焼きが入ってないようで(安物って感じ)すぐに刃先が丸くなってしまいますが、伊藤は研磨して使い続けています。
それより吹きの工房経営者が特に頼りにしてるのは、ここのハーモニカバーナー(ダルマに使うバーナー・弁当箱みたいな形で細い火が沢山出るやつ)が安くてベストな火口だから。ただ、絞りすぎると流速が落ちて逆火しやすいので、伊藤は穴の一部を塞いでしまいます。ほとんどの工房はここのを使ってるはず。彩もそうです。最近ここのをパクッた国産品も出てきました。


エナメル絵付け
ガラスに絵を描きたいならエナメルが基本。ガラスの粉を高温で焼き付けるのですから、耐久性もあるし、食器にも使える。イスラムのエナメルのランプなんかがガラス史的には有名です。伊藤は学生時代に今は亡き有名な久保木先生が教えてくれてた。それ以来何もしていないから細かなウンチクはパスというか素人です。すいません。ひたすらエナメル粉を練りまくってた記憶しかない。メジウムのあの臭い油の匂いはけっこう好き。最近は売れっ子の作家もいて、センス次第では案外いける技法なのか。材料費も安いし。安倍川さんなんかは銀箔の上にちょとシュールな精密画を描いてたけど、その労力は伊藤なんかは考えたくもない。問題はエナメルの焼付け温度がちょうどガラスがへたるかどうかのぎりぎりなところ。ワイングラスなんか苦労した。それとも今はいいエナメルあるのかな?やっぱ吹きの作家ならパラダイスが面白いよね。それなら少々ウンチク出来ますが。

塩化スズ
伊藤はラスターのものを作る時に使用します。虹色に発色。100年昔からレッツ工房とかティファニーなんかがやってたあのピカピカです。ブルザイなんかで製造してるあのピカピカの板もそうかも。知り合いの作家が安全性の試験にだしたそうですが、食器としては問題なかったそうです。スズ自体は無害ですし当然かも。下地のガラスに銀を含むとより効果的となります。
他にスペシャルな調合で塩化鉄や、塩化バリウム、硝酸ストロンチウムなどを混合して様々な色をだします。アルコールなどに溶いて噴霧します。その時箱に入れて換気装置をつけるのが一番ですが、ないなら外に出てやったりしてます。塩素の強烈にすえた臭いがしますから、たまりません。実際吸うと体に悪いし。伊藤なんかはそれで歯ががたがたになった気がする。そんなわけで換気にはくれぐれも気をつけましょう。彩がオームと勘違いされそうだから決死の覚悟のある方以外は、あまり皆さんはやって欲しくないです。

エルビウム
酸化エルビウムを数%溶かし込むとプラスティックみたいな蛍光色っぽいピンクになります。あのネオジムより、さらに2倍高価な恐ろしい稀土類です。彩では昔一度だけ熔かしました。そのままでもなんか安っぽい気がして、白と合わせて不透明のピンクも作ってみたりしてそれは大評判でしたけど、塊でロッド作られたりして、辛い思い出です。


オーバーレイ
外被せ。実は伊藤が一番多用する技法。一般的には透明系の色ガラスで内被せしておいた吹き玉をひっくり返して被せる技法。これは作家によってやり方が様々にあって、半円形の木のジャックで押して被せる方法や紙リンで被せる方法、マーバーだけで被せる方法、伊藤のようにグラファイトジャックで被せるなど。ブローの入った内被せの中にスキのガラスを吹き込んだり、ポットのガラスを吸い込んだりとびっくり偽外被せのテクもあります。いろいろ楽そうなテクを開発してるのは、失敗してしまう人が多いから。それだけ難しいからとも言えますが、ちゃんと練習すればいいだけのこと。それだけ吹きの技術レベルがはっきり出てしまう技法です。不透明の色ガラスだったらパウダーふってもあまり変わらないので、労力を考えればそちらをお勧めします。
企業なんかでは型に色ガラスを薄く吹き込んで破った後、そのまま内側になるガラスを吹き込むという量産に適した方法もやってます。

Dコースなどで、詳しく練習します。初心者の人にはお勧めしません。ちゃんと片肉じゃなくて内被せ出来るようになってからトライしてみましょう。

オパールセントガラス
半透明の乳白のガラス。クーグラなら60番。ラリックの作品での使われ方が今まで見た中では一番カッコイイ。要するに白が薄くなった感じです。再加熱の具合や冷え方で発色が微妙に変化するのが、難しいところ。昔調合してみたことあります。少しコバルトを入れてラリックの色調の真似してみましたが、それで作った器ぜんぜん売れなかったのが思い出です。彩の常連さん達は60番を銀箔の黒化防止と発色の為に使うことが多い。

温調機
温度を自動で制御するコントローラ。今では安くて便利なプログラム式が各メーカーから沢山出てます。安いのから高いのまでいろいろ。ガラスですとそんなに機能がなくても大丈夫ですので、ほどほどのを買ってます。個人的には表示が大きくてピカピカ光る部分が多いほど好き。意味もなく電流計も付けたりして。性能とは関係ないです。車のテールライトもいっぱい光るのが好きです。それで、ステップワゴン買いました。

温度
ガラスの温度について簡単に最低限覚えなくちゃいけないことを書きます。講座生の方などにはガラス原料の溶解については専門的なのでパスしますが、作ることにおいてはまず徐冷(アニール)温度の事があります。この温度はガラスの組成でいろいろあってAスキの場合は工房ではざっくりと480度に合わせてあります。これは温度センサー(熱伝対)の位置だけで誤差があるし、扉の開け閉めだけでも簡単に変化する事情もあります(扉を開けると冷たい外気が入り込んできますので、すばやく作品を納めて一秒でも早く扉を閉めましょう。もたもたしてると扉近くの作品が割れることも多いです)。これ以上の温度ではガラスは少しだけ変形しやすくなります。ピックアップの時は安全を見込んで530度にしてあります。これが490度だったりするだけでもかなり成功率は下がるので、そのへんはデリケートです。ガラスは徐冷温度からひずみ点(ストレインポイント)430度くらい?までがゆっくりと下げる大事な時間帯です。それ以下では理論上ゆっくり下げても永久歪をとるという意味では効果はありません。徐冷時間は肉厚の二乗に比例しますから大きな塊ですと一週間とか徐冷しなくちゃいけないこともあります。1mくらいの径の塊ですと、1年かかるそうです。ですので、パートドベールなんかでも案外奥行きのない薄い作品にして見た目はデカク(リベンスキーなんかもそう)するのが定番です。徐冷窯から作品を取り出すに大丈夫な温度のめやすはその作品が素手でぎりぎり持てるかどうかです。あちっ!て具合で急いでるなら新聞紙などで徐冷窯のなかでそのまま包んで取り出します。
吹きの作品つくりにおいては、ガラス温度は1200度で巻きだした瞬間からバシバシ冷たい外気にさらされて急冷されていきます。まだ暖かいうちに成形しなければなりませんから、自分のペースではなくガラスのペースに合わせて作業しましょう。冷たい道具などでいきなり触れると最初に触った部分だけが冷やされることになります。これが片肉の原因の一つにもなります。ガラスは外側から冷えていき、内部とはかなり温度差があります。肉厚の作品などではそれで待つ時間もかかるわけです。片肉のブローになりにくいいいガラスの温度管理のコツは内部のガラス温度が低くないことです。下玉がかちかち冷えてて上ダネを巻いて、まだ内部に熱が伝わらない状態でブローしたらとんでもなく片肉になるのを実感されるといいかもしれません。
慣れてくると目で見ただけでも、そろそろやばそうとか第6感が働くようになります。こちらがあせってても、本人は気づいていないみたいですけど。そんなに慣れていない皆さんはダルマでガラスが揺れだしてから頭のタイマーを作動させてください。どれだけの時間が経過したかいつも心の隅においてください。勿論肉厚でも違いますが。



カーボン(素材)
炭素。グラファイト(真っ黒の鉛筆の芯みたいやつ)はガラスに汚れをつけ難いので、道具としていろいろに使われています。コテ、ジャック、紙リン、パドル、離型剤として、皆が一度は見たことがあるはず。短時間の高温に充分耐えますが、連続となると製品の表面が徐々にボロボロになってきます(600〜700度では酸素と反応します)。彫刻刀などで削れるのでスタンプとしてもお勧めです。脆い素材で床に落としただけでも割れてしまうので、扱いは慎重に。値段はかなり高いので割れるとがっくしです。噂では最近新製品でセラミック系?グラファイトが出てきてそれは割れないそう。まだ使ってませんが他にはスプレーになってる製品もあって、これはサンドキャストなどの離型剤として使います。

型吹き
彩では型を使わない宙吹きが基本ですが、その技術があれば型に吹き込むこともまた、面白い表現に繋がることもあるかと思います。同じものを量産しなければならない場合、回転して吹き込めるようなシンプルな形は木型を使います。普通は2つ割などです。ガラスの肌も綺麗です。木型は自分で作るより、専門の方に注文します。伊藤の経験では一つの木型で200個いけました。もっといけるかも。工場などでは高価な金型もたくさん使います。そちらのノウハウは工業用なので伊藤にはあまり分かりませんが。他には耐火物や粘土などいろいろ可能です。作家物の一品制作の場合で、複雑な形状の場合したら、石膏を使うこともあります。上手くて数個しか取れませんが。これも割り型にしておきます。その方法は書くと膨大になりますので、またDコースなどで説明していきたいと思います。ガラス表面のテクスチャーをつけるという意味では凹凸のある金物や木その他いろいろなもので試してみると面白そう。

がた
そのとうり作品がガタガタすること。ちゃんと底ズリしてないとです。販売する場合はこれがお客さんに嫌われてしまうのでつらいところ。平盤が上手でないとますますガタガタになったりして。面倒でも売り物なら底ズリお願いいたします。底ズリしなくとも底が平らになるように吹けるようになろうね。

片肉
片肉になるとどうしても器はゆがんでいきます。ですからこの憎き変体野郎?はどうしても退治しなければならんのです。皆から無邪気になっちゃうんですけどと質問されること何百回か?特定の原因は一つではなく、すべての作業をきちんと出来ないとです。各自の吹きの技術がそのまま出てると思ってください。
それでは解説にならないのでガラスの気持ちを代弁しますと、
(ガラスは温度の高い部分にブローが入っていく。均等に入れたいなら温度差があるとダメってこと)
紙リンやハシなどでは均等に触れていますか?触るということは冷やすことなので回転が足りなかったりで部分的に触ると温度差が出来てしまう。特に最初に触れる時は道具も冷えていますから注意です。
タネを巻いたら、綺麗な卵型になってますか?ぼてぼてに歪んだ上タネは当然ガラスが多い部分と少ない部分があり温度差が出来ています。たとえそのまま紙リンで形を整えても温度差は残っていますから注意。
(ガラスは吹いていくと中心に真ん丸く空気が入っていく)
吹く時はたとえガラスが柔らかくとも竿のセンター軸上にガラスをコントロール。曲がったまま吹くと、空気は真ん中に入っていくわけですから、一発で片肉。曲がったなりに均等に空気が入るなんてわけない。またボテボテの形なら肉周りもボテボテにしかなりません。ベンチブローでさえグワングワン曲げたまま吹いてもらってる人いますけど、その時回転してれば当然ガラスが上下動してるはず。ガラスの輪郭線の上下動には敏感になって。
(ガラスは肉の薄い所から冷めていき、厚い所は蓄熱してる。ダルマでの加熱では逆になります)
この基本的な原則を理解していれば吹くタイミングだけでも微調整できるはず。
片肉を直すテクもいろいろありますが、片肉を直すテクがあるなら、元々片肉になりにくいわけでして、ちょっと疲れたからそれは今度書きます。
ちょっと脱線しますが、伊藤のガラスに対する考え方として、歪んだなりにそれもよしということはない。技術の上達があればこそ、新しい表現にもチャレンジしていける。その辺の作家の能書でよくあるガラスのなりたい形に合わせるとかはカッコイイ風で実は修行がぜんぜん足りん。ガラスに意思が有る訳もなく単純な物理法則があるだけ。一見ガラスが勝手に動くように感じても本人が訳も分からず単に余計な動きをしてしまっているだけだと気づかねば(それがほとんどの人は気付かないのだけれど)。ですからガラスのなりたい形に合わせるとは自分の技術の範囲から抜け出さないで、ガラスの美しさに頼ってしまっているとも思えます。ちょっと情けない。吹きを始めた頃は誰もがチャレンジだったはず。ガラスに対する強い意志と冷静な観察眼が必要です。

学校
彩にも時々、ガラス作家になりたいんですがどの学校に行ったらいいのでしょうか?とか問い合わせあります。ただ勘違いしないで欲しいのは学校に行ったからすぐ作家になれるというような甘いもんじゃないことです。ラーメン屋の研修?とはわけが違います。学校はガラスの様々な技法の基礎を教える所。もしくはクダラナイ先生のぼやきを聞くところ。プロのレベルになるのは、卒業後の長い各自の努力の結果です。いいところは同じ志の仲間と出会え刺激しあえること。卒業した先輩の活動を通して、またいろんな情報も入ってきて、自分の将来を考えるきっかけができること。とりあえず学校にいったなら、それなりに学ぶことは多々ありますし、とっても忙しいから学生時代はあっという間に終ってしまいます。
ところでここ数年のうちに、さらにガラスを教える大学や専門学校が増えました。景気が低迷しつつ少子化の現在、そんな状況とは関係なしにどこまで増えるのか?問題なのはガラス学校は教える側の都合で増えているだけなこと。求人が増えているわけではない。学生の為の学校なのか?職員の為の学校なのか?ある専門学校が立ち上げで生徒を募集したのに、先生になれないかとの問い合わせばかりだと、冗談みたいな話は本当です。良い学校とは教育者としていい先生がいる学校ということで、必ずしも設備の問題ではありません。入学される方はその辺も注意しましょう。
卒業生の増加に伴って新しい個人工房も毎年続々と増えています。需要とは関係なく増殖し続けるこの業界。現実は、作品でメシ食えてる作家は稀だし、廃業する工房も増えていることは辛いことです。実態経済を反映しているガラスメーカーはもう数えるくらいしか残ってない。お役所関係は相変わらず社会主義経済圏ですが。このままお役人は日本を食いつぶしてしまうのであろうか。
魅力的な質の高い作品を作れる作家がある程度の人数活躍しないことには日本に本当のガラスブームなど来そうにない。いいものはいいと見極められる消費者やギャラリーもいないとですが。先生と生徒だけで成り立つのはお茶やお華や宗教などの世界。学校も実はそうなんだけど。そうならないように荒地に放たれた先輩達は頑張らないとです。

紙ゴテ(道具)
まっすぐな木の棒に新聞紙を巻きつけた道具。口ひろげの時使用します。シワにならないように、キツキツに新聞紙を巻きつける。ちょっとコツがあります。ハシキズが付かないので透明系の作家には多用されてます。水に付けすぎないように(ガラスが冷えてしまうので)水がボタボタ落ちるようではぜんぜんダメ。よりガラスが冷えないし、タッチも最高なコルクのコテの作家もいますが、すぐ消耗してしまうのが勿体無い。内被せの色によっては紙カスが付いてしまうので使用できません。伊藤はそんなことであまり使わなくなりました。

紙りん(道具)
ガラスの形を整える道具。昔は朝日がいいとかいろいろウンチクありましたが、ここ何年かはどこも再生紙でペラペラ燃えやすく紙カスも付きやすくなってしまった。悲しいの。もう限界に近くなってきていると思う。15年くらい?前までの新聞はよかった。紙カスなんてなかったし、やたら丈夫だった。ひょっとしてまだ再生比率の少ない新聞もあるかも?インクの種類がどうたらとか言ってる作家もいますが、実際誰か調べてもらえませんでしょうか?もし10年以上20年ものならすばらしい、古い新聞紙大量に余ってましたら彩にわけてもらえませんでしょうか?お願いします。あとジャンプがいいとかの噂も聞きますが、いろんな週刊誌も試してみようかなっと。面白いのはアメリカ人も苦労してるらしく、ウォールストリートジャーナルがいいとかウンチクがあって、いろいろ探しているようです。彩は4枚を3等分に折っていく方式で、これは小さな手の日本人に合わせた折りかたです。右上の端を切り取って蒸気抜けにしてる人もいます。
デモを見る限りではイタリア人は紙りんはたまにしか使わないし、使うと笑えるくらいヘタ。北欧系は上手です。たぶんイタリア人は新聞読まなかったんだと思う(冗談)。
紙カスを付けないコツは巻いてすぐにかけないで表面が冷めるのを少し待つことと、竿の回転を早めにすること。反転する時は気をつけて。伊藤は他人の作業を見てても紙カス付くかどうか予言できちゃいます。べたっと付いたら切り取るしかありません。微かな汚れは1分くらい焼きこめばなくなりますが。ガラスが濁ってくるようなら、その紙りんは捨てて新しいのに交換です。

どうしても紙カスが付いてしまう方にはクロリン(カーボン繊維)という製品があります。すべりが悪いので、水に濡らして使用しないとガラスに引っ掛かるのが良くないですが。彩のレンタラーの皆さんはクロリン愛好者です。

カルロドナ
ムラノの道具屋さん。伊藤はジャックなどはここのを愛用してます。それなりに高いのですが、ムラノの伝統に裏打ちされた何かも感じます?ただ、沢山注文すると同じ道具でも個体差が大きくて、当たり外れが多いです。
昔ムラノにはディノという完璧な道具屋がありましたが、それと比べてしまうと残念としか思えません。

カレット
ガラス片のこと。使用済みのガラス片などはある程度リサイクルされます。彩では色ガラスや透明、竿元などに分類して洗浄後、原料投入の時に再利用します。環境のためにもいいことなのですが分別に手間隙がかかるので経済的かどうかは?です。講座生の皆さんも出来るだけ分別にご協力ください。それだけで、スタッフの手間が数分の一になりますので。
自治体なんかがやってるリサイクルのガラス工房もこの分別、洗浄がかなり大変かなと思います。溶かしても綺麗なガラスというわけにはいかないので工芸には厳しいかも。アメリカでは最初から工芸用のカレットだけで溶かしてる工房も多いそう。シアトルバッチなのにメイドインチャイナだったりする。最高に使いにくく汚いガラスだった。それでも確かに体に楽だし光熱費も安いし、それでカレット自体が安ければいいかもですが、当然のことながら色ガラスの調合なんかは出来ません。
パートドベールなどでは水揚げしたガラスを使用しますが、鉄粉の混入がシビアなので、問題なく使用出来るカレットはほとんど見つからないとは、知人のパート作家の話。水揚げに鉄のレードルを使っただけでダメみたい。


キャスター
ガラス窯に使用する耐火コンクリートのことです。伊藤はこの素材が大好き(なぜか分からんが)。彩の窯も基本骨格は耐火キャスター一体型で作ってあります。耐火度が高くなるほど丈夫になりアルミナ比率が高くなります。ただし、熱伝導率は悪くなる傾向。断熱性を重視したものにライトキャスターというものもあります。施工方法はコンクリと似ていますが、水分量は注意しないと強度にかなり影響します。また型枠はよほどしっかりさせないと崩壊の原因になります。ミキサーやバイブレータは必需品かも。関係ないですけど手抜き工事などで水増しのシャワシャワのコンクリ流してると、建物や高速道路なんかぜんぜん設計強度でてないだろうな、なんて窯を作ってるだけで実感します。

キャスティングレードル(道具)
ガラスを大量に流し込む時などに使う巨大な鉄のスプーン状のもの。サンドキャストではお馴染みの道具です。後はかい出しなどでも使います。スタイナーなどで販売してますが、ほとんどは水道管の巨大な蓋を利用して自作します。なるべく短時間で流し、作業後すぐに水に浸さないとレードルとガラスがくっ付いてしまいます。ガラスのすくい方など扱いは少々のコツがあります。重いので女性が扱うのは厳しいかも。

キャスト
キャストには、熔けたガラスをレードルなどでそのまま型に流し込む方法(ホットキャストと呼んでる人もいます)、サンドキャストもその技法の一つです。と、耐火型にやや大きめのガラスを詰めておき、電気炉中で温度を上げて熔かす方法(キルンキャスト)があります。伊藤は前記の技法だと色ガラスの調合からやってるマークパイザーが好き(正直やられたと感じた)。後記だとスティーブンワインバーグという作家が好きです。

ギャザリングロッド(道具)

ポンテ竿の先端が丸い玉になっているもの。これもサンドキャストやプレスの時に主に使用します。一度に沢山のガラスを巻きだしたい時便利。いろんなサイズがありますが、大きいものは中空になってます。エッセムやスタイナーなどで販売してます。なぜか吹きではあまり使用しません。竿払いが面倒だからだと思う。

金箔
ほとんどは金沢で生産されています。金相場にもよりますが厚打ちの箔で20センチ角で2千円円くらい。そんなに安いもんじゃないですが、ガラスに付加価値をつけるという意味では割安かと。通常は金澄という厚打ちの純金箔を使います。普通の箔はふわふわ飛んでいくほど薄いので、少しの風でくしゃくしゃになったりと苦労します。バキューム装置などで箔が飛ばないようにしている工房もあります。ムラノなんかは薄いのをさらっと使うのですが、日本の作家はがっつり入れて、どんなもんだいとやるのが好きかな?金のイメージだと、とかく成金趣味的に感じますが実際の金自体は上品なもの。使い方の問題かと。伊藤も歳とってなぜか金が好きになってきた。やばいかも。一説では視力が衰えてくると、微妙な色彩の違いが分からなくなり、キラキラするものにしか反応しなくなるなんて嫌な話もあります。ガラスには関係ありませんが合金にはホワイトゴールドというシルバー色のとかピンクゴールドという銅を含んだ赤っぽい金もあります。伊藤はピンクゴールドがなぜか大好きです。
使い方は銀ほど難しくありません。表面にあっても、ガラスの中にあってもいいし。銀よりは熔け難いのですが、それでも高温すぎると熔けてなくなってしまうので注意。銀のようにガラスに熔かしてそのまま発色剤のように使うことは一般的ではありませんが、、ヒューミング(金を酸素バーナーなどであぶって蒸気をガラスに当てる方法)ですと、ガラス表面は赤っぽいラスターのようになります。金箔の有名な作家では藤田さんの飾箱。あれはけっこう厚い箔を使ってそうなひび割れ方です。観光地などで偽金箔を販売してるところもあるようで、ガラスに巻いたら黒くなったりして大騒ぎなんて面白いこと(本人は真っ青ですが)もありました。


銀箔
金よりぜんぜん安いので(20センチ角で200円くらい)、吹きでは多用します。吹きで使用してるのは銀澄という厚打ちのもの。ほとんどは金沢で生産してます。まるでおにぎりに海苔を貼るがごとくレンタラーはとりあえず貼りまくる。一度貼りだしたら何十年も止まらない。そんな作家も多いです。なんとなくなら誰にでも使え、原価も安く、それなりのお高そうな作品に化けてしまうのが銀の魔力か。
注意点としては、作業中の風で飛んでいってしまうので気をつけること。1000度くらいで熔けてしまうこと。作品表面にあるといつかは空気中の硫黄成分と反応して黒化してしまうことです。表面に貼るのは誰でも出来ますが上タネを巻くのでしたら技術が必要です。また狙った細かさに散らせるのもテクがあります。
銀はガラスでは黄色に発色しますので、その効果を狙って銀箔を金箔に見せかけるテクもあります。還元させるとラスター色になるのも特徴です。銀はガラスに熔けると失透しやすいので複雑な陶器的な色味は銀による発色に頼ることが多いです。もともと江副行昭さん、壱谷旭さんという有名なガラス作家が銀箔を使いこなしていて、その影響下にあって活動している作家はほんとに多い。両巨匠を超える作品が見たいものです。


ギャファー
ニュージランドの新興色ガラスメーカー。ここのレッドは気になって購入したことがあります。赤はきっちり真っ赤に発色させるのはどこのメーカーでも難しいこと。クーグラなんかでもなんだかんだで真っ赤というのはないし。膨張もAスキとは合い易いようです。後、吹きの作り手のことを(助手じゃないです)最近、ギャファーと呼んでます。なんかカッコイイような。わしもいつか呼ばれてみたい。

ギャラリー
発表の場。ギャラリーにはおおまかに2種類あって、企画としてギャラリーが作家を選定して売り上げの数10%を取るもの、4割くらいが多い(本来のスタイルです)。単なる場所貸しギャラリーとして期間中の会場費を取るもの(公共のスペースなど、要するにアパートの大家さんみたいもん)があります。支払いなどの条件はギャラリーでいろいろです。
企画の場合、いいギャラリーかどうかはそこが活気があるかどうかで分かると思います。来年の分まで企画が埋まっていたりするような精力的なギャラリーはオーナーのやる気が感じられます。結局オーナーの作品を見る目が確かかどうかで決まるような。作品に深く興味を持って作家を指導し育てていけるくらいのオーナーはなかなか少ないです。自己中な作家はギャラリーやお客さんという現実社会に育てられていく側面も大きいのです。
ざっくり言って仕事としてまともなギャラリーとは商品管理と支払いがきちんとしていること、顧客管理が出来ていること、梱包と発送がきちんとなされてること、です。そのうえで後は、接客の上手な、またいい作家を自分の目で探すことが好き方ということでしょうか。そんな仕事が好きならギャラリーのオーナーに向いているかもしれません。実際、きちんとしていないオーナーですと不思議と何かしらのトラブルが発生します(特に支払い期日がルーズかは判断材料としては分かりやすい)。作家側はそんなギャラリーとは少し距離を置いて付き合った方がいいかもしれません。また貸しが主のギャラリーはほとんどギャラリー側の労力をアテにできなかったり、素人さんに近いような場合も多いですので、気をつけて。
ギャラリーの方は基本的にはビジネスとしてやっているわけですから、企画の場合、作家は相応にベストを尽くして作品つくりするのが礼儀かと。傍から眺めるにバブルの頃ならともかく、とても儲かりそうな仕事ではない(まっ伊藤の相手するならそうなっちゃいますが。最近は売れないですけど本当にいいんですか?と聞くようになりました。)。よほど道楽と割り切ってやるか、信念を持ってやるかでないと、もたないだろうなと思う。それなりにご苦労の多い仕事だとお察しいたします。


業者さん
いわゆる画商さんのこと。なんとかギャラリーなどと名刺いただく事が多いのですが、実在のギャラリーを持っているわけではなく、多くはデパートと作家の仲立ちをして手数料をとるスタイルの方々です。なぜに存在しうるかというと、これはデパート社員が売上の責任を取りたくなく、また、いい作家を探す眼力もないという、情けないまでの怠慢のうえに成立している仲介屋さんというところでしょうか。美術館に企画をもっていき、作品ごっそり納品するようなスケールの大きな業者さんもいます。いい業者さんとの出会いは作家を売れっ子にしてもらえるし、悪い業者さんには、だまされたりと、成功にはリスクがつきものです。伊藤なんかバブルの頃、売上持ち逃げされ連絡つかずなんて体験もありました。工芸を扱ってる業者さんは、地道な方が多いのですが・・・。


クーグラ色ガラスメーカー)
老舗のドイツの色ガラスメーカー。ここが膨張係数が同じな色ガラスを売り始めたことによって、スタジオグラスムーブメントが隆盛したのは事実。ガラス作家が絵描きの絵の具のようにいろんな色を使えるようになった。それはどれだけ画期的なことだったかと思う。ドイツの基礎科学力の深さを感じるわけです。
膨張係数は93くらい。Aスキとは実はそんなに相性がいいとは言えませんので、使い方はある程度制限があります。ただ、品質が安定してるので愛用してます(今はどうか知りませんが、他のメーカーだと鉄粉や泡が多くてということもありました)。ドイツ的生真面目さで事務トラブルも少ないほうです。毎年一トン近く買うのに、いまだTシャツ1枚しかくれないのは、かなりセコイと思うんだけど。

くくり
ハシでガラス器の口元を絞る作業の事です。初心者ですとこれがなかなか一本線にならない。ヨレヨレしてしまう。ハシの角度が竿に対して直角になってないことが原因です。多少意識的になってもらうといいのですが。どうしてもダメな方はハシをやや寝かしてかけ始めます。また、しっかりとくくれているかはポンテを落とす時に大事な要素です。しっかりとくくれていれば、ちょんと叩くだけでも落ちます。楕円にくくれている器や中心がとれていない状態でくくってしまった器は本体が歪んできますので注意。

口切り
ポンテ後に口肉を引っ張ってから口を鋏で切ります。初心者の方ですと、リズム良く、素早く切れないので、歪んだり、ガラスが冷えすぎたりで切れなくなったりと、いろいろ大変。トイレットペーパーの芯などでイメージトレーニングして。後は鋏を入れる角度に注意。下向きに切り始めるのはよくありません。平行かやや上向きくらいでスタートしましょう。鋏は園芸売場などにある(割と真っ直ぐなもち手で刃のあまり長くないやつ)鋏を代用します。そのままでは刃先が尖り過ぎなので少し削るといいのですが。1000円くらい。ステンレスだともう少し高いですが。そんなに高いものじゃないのでぜひ自分のものを持つべきです。勿論お金持ちな方は海外製のいいやつをお勧めします。

口巻き
伊藤は必ずといっていいくらい自分の作品には色ガラスの口巻きを入れます。ガラスが一種の絵だとしたら額縁のつもりで入れるわけです。
均一な太さで巻きつけるにはコツがあって、付け始めを細くすることがとにかく大事。巻きつけるスピードで太さの調節をします。始めすばやく後ゆっくりといった感じでしょうか。(初心者ですと、スタートでボテッと付けてしまうのがいかにもな失敗例です)勿論、助手がちゃんとヤリ型のあたたかいタネを持ってこれるかも成功の鍵です。ガラスを巻き付けるという装飾は他にも沢山ありますし、すごく多用します。何度も失敗して、ようやく覚えていくことと思います。


クリスタル
本来は水晶のことですがガラスの場合は鉛分の24%?以上のガラスを指していいます。ただ実際のところは企業秘密なので分かりませんが。鉛はガラスに光沢を与え屈折率を上げるので、昔は高級ガラスの代名詞となっていました。単に鉛が多いというより、不純物の鉄分の少ないことも大事です。
昔伊藤が学生だった頃はこれじゃないと工芸品として見なさないくらいの教育を受けました。今はエコの時代だしそんなことは言いませんが。伊藤は24%クリスタルで窯をスタートして、15、8%などのセミクリスタルに移行していき、10年前から今のAスキです。計10年間も鉛ガラスで吹いていました。自分ながら凄いかもと思う。もうやりたくはないですけど。鉛の揮発成分が温度の低下とともに煙突などに付着しやすく、また炉材を侵食しやすく苦労したことが思い出です。
無茶重くて、ねばねばといつまでも動くので、待つ時間がとても長いです。逆に言うと初心者には作業時間が長いので最高かも。流動感のあるどっぷりとした形は得意ですが、いつまでも動くのでベネチアングラスみたいな細工ものには適さないガラスです。金赤系などは信じられないくらい綺麗に発色します。セレン赤などはは使えませんが。今でも切子業界などはクリスタルが大好き。柔らかいのでさくさく研磨出来ます。
ちなみに鉛成分が多いと膨張係数が違っても、割れにくくなる性質があるので、クーグラにも15%程度は入れているみたいです。低溶融の佐竹なんかはたぶん30%以上だと思う。昔の江戸時代のガラスとか薩摩切子なんかは高温で熔かす窯の技術がなかったせいか?手作業でガラスが削れるほど高鉛のガラスでした。ところで鉛の害を心配される方はいらっしゃるでしょうが、食器で使うくらいはぜんぜん関係ないと思います。伊藤なんかはもろ鉛原料を熔かす現場で10年、そんなもんじゃない量を吸い続けてきたわけですから。それでもいつかは鉛がなくなるといいのですが。同じような性質のガラスが開発できるかは現代の科学でもかなり難しい問題だと思う。



黒いガラスは彩で常時熔かしていますが、注意点としてはダルマなどの再加熱で熱をより吸収して、デロデロに焼けてしまうこと。その事を常に頭に入れつつ制作しましょう。ニッケルを入れたり黒化現象を利用したりして調合しております。クーグラーなら95番はそれよりも硬いですが、54番はもっとデロデロになってしまいます。黒は色じゃないのでどの色と合わせても破綻しないし、締まって見えるので伊藤もよく使います。


珪砂
ガラスの主原料。酸化珪素。地球上の土や岩の主成分でもあります。要するに海岸で見かけるような透明っぽい砂です。昔は国産のものを使用してたそうですが、今は安価で高品質な海外のものがほとんどだそう。ガラスに使用するにいいのは不純物が少ないもの。鉄分が多いと緑のガラスになってしまいます。板ガラスなんかは鉄分が多いので断面を見ると緑なのが分かると思います。サンドキャストにも勿論使いますし、吹きに使っても、案外いい感じ。使い方はただあったかいガラスに付けるだけ。無垢か、肉厚の作品だといい味。ダルマの底に敷いたりもしてます。


ケーン
ガラス棒のことを皆はケーンと通称してます。熔けたガラスを棒状に引っ張って(太さは技法によりまちまち)それを装飾パーツとして利用します。ガラスというものは引っ張ることでいくらでも伸びていくので、そうしたガラス棒を利用することは本質的にガラスらしい装飾テクかもしれません。ザンフィリコ(レースガラス)やムリーネ、ラティチェロ、フィリグラーナケーンドローイングと様々な表現テクは一応ケインワークの範疇でしょうか。

ケーンドローイング
色ガラスのケーンをトーチで炙ってガラスに直接、絵を描く方法です。元々はスタジオグラス系のアメリカ人の開発したテク。代表的なのはマークパイザーという作家。精密な風景画などを8時間もかけて描くと噂で聞いたことがあります。ちなみに伊藤の一番好きな作家です。普通はそこまでしませんが、コアグラスの装飾も一種のケーンドローイング。そう考えてもらえれば、吹きの作家こそもっと活用すべきかと。絵の得意な人は特にお勧めしときます。

ケーンマーバー(道具)

ケーンを並べられるように細長い溝を切ってある金属板です。スタイナーで販売してます。フィリグラーナ用のごく細いケーンですと、そのままでもガラスの本体に溶着できますが、なるべくなら下からコンロなどで暖めたり、バーナーであぶったり、電気炉などに入れたりして余熱しておいてガラスに溶着させます。便利な道具ですので工房に最低一つは必要です。

研磨加工
吹いたものそのままでは、がたがあったりデザイン的にも限られてくるので、殆どの作家は2次加工します。削ったら光らせないとの場合が多いので、研磨します。ダイヤなら500番くらい、砂なら600番くらい(細かいに越したことはないですが)までにしたら透明にする為に木盤(桐の集成材)をかけます。昔は磨き粉というものを使用しましたが、今はチェコのやり方の影響もあってか?パーミスという軽石の粉を使います。確かに磨き粉よりはぜんぜん早いです。木盤にパーミスを溶いた水を付けてから押し付けつつ、さくさくとしごきます。木盤が白く乾燥してきたら、ガラスは急に熱を持つので危険、そうならない半乾きの時が研磨にいい感じの時です。木盤ががたがただとしっかり作品に当たらないし飛ばす危険性もあるので、がたが激しい場合スタッフの荒井か伊藤に削り直してもらいましょう。そのままではツヤがないので、最後はセリウムをかけます。バフなので、木盤より楽。これもある程度押し付けないと効果は少ないです。ちゃんと研磨出来てるかは洗って乾燥させ、蛍光灯などの光を反射して見える位置で確認しないと分かりません。加工場のエアガンはそのためのものです。研磨は作品をしっかりと持つ握力がかなり必要ですから、伊藤の大物は男にしか加工させません。重すぎたら、首からの布を作品に乗せてやる方法もありますが、巻き込まれないように注意です。工房によってはパーミスがなくて、いきなりセリウムのところもあるようです。
どうしても大きな機械が当てられない形状の作品ですと、リュータなどを使います。木盤の手前までは案外早いのですが、テカテカにするとなると、バフを押し付ける力が弱いので、呆れるくらい時間がかかります。なるべく頑張って大きな機械でやる方がいいに決まってます。彩にはお風呂場のような場所がなくて置けませんが、ウォーターサンダーなどがあると便利。昔の学生時代の同級生だった家住さんは大きなオブジェの研磨に活用されています。


コアガラス
バーナーワークのテクです。ステン棒にスチールウールを巻いて、型になるような耐火石膏を塗りつけていきます。しっかりと原型を作って、充分乾燥させたら、ガラスケインを巻きつけていく技法。吹きと違うのは型の上にガラスがあるので、引っかいたりしても器の形自体は変形しないこと。でも吹きの経験者ならなんとかなりそうだし、大雑把なデザインが普通の吹きガラスなら、緻密な模様の表現は参考にすべき。彩では昔、コアでは独特な作風で独走する佐藤透さんのワークショップを開催しました。ちなみに佐藤さんは若い頃彩で働いていたこともあります。

コーニング
ご存知アメリカのニューヨーク州にある世界最大のガラス美術館です。歴史的な名品が沢山見れる。工房でワークショップもあるし、ショップもあるし、見所沢山。日本だと、ガラスの美術館といえばアールヌーボかデコかベネチアングラスが多いのですが。

工芸
工芸とはなんぞやという問いは、ガラス作家ならちらっと考えてしまう。工芸が実用品のふりをしながら、作家の意識はむしろ素材表現にあり、装飾や技法に走ってきたのは見てのとうり。とっくに実用的ではない粗大ごみとかした作品も多い。伊藤のなんかはかなりそう。それでもガラス工芸家と思いたい。だから実用性は工芸の本質ではないと。勿論実用性のないものは工芸と呼んではダメという従来の狭義な区分けもあるのですが。ということで伊藤の新定義?に従えば特定の素材に執着することがそもそも工芸なのであります。自己満足なのかもしれませんが、ガラスの可能性に挑戦する過程が面白くてたまらない。アーティストにとって、素材は表現の媒体でしかないのかもしれませんが、工芸作家は素材に導かれて漂うわけです。
他にガラス造形家なんていう凄そうな言い方もありますが、それで花瓶なんか作ってたらちょっと恥ずかしい。ガラス職人と言うほどでもないし(職人さんに失礼かと)、ガラス細工師なんてどうかな?と思いましたがバーナーワークみたいだし。結局自分の名刺には彩の連絡先しか入れてない。
名称は何であれ自分が真剣でなければ、他人の心を動かせないように思う。伊藤の作品を見たことでガラスを志した若者に出会う時、ちょっと自慢したくなります(ビンボーになっちまったと責められても辛いですが)。自分が死んでも作品は残り続ける、作品こそが自分と他人との接点だと思ってる。

高台
お鉢などでは高台を付けることが多々あります。やり方はいろいろ。吹いて作るブローフット方式とか、折り返して作る昔のローマングラスのようなやり方、無垢のガラスを付ける単純な方法、ガラスを巻きつけて作るレーマ杯のような方法、くくって中空の高台にする方法、予め本体に高台になる部分を作っておくなど。それぞれそれなりに難しいので吹きの技量がばれてしまうのですが、逆にマニアックな方なら楽しめる部分でもあります。面倒ですが。詳しくはBコースなどでやってます。

工房
工房といってもガラスの場合はその技法で、経費はまるで違います。一番大変なのは吹きガラス。通常の木造住宅というのも防火上厳しいので建物からスタートしなければなりません。毎月の経費も数十万単位とかなりの覚悟が必要です(彩なんかは数百万単位ですが)。それ以外の技法なら、部屋一つ確保できれば大丈夫。バーナーワークなら頑張れば、大きな机一つで工房になります。経費も吹きとは桁が違います。つまり吹き以外ならそんな大した問題ではない。カルチャーの趣味のおばさんなんかの方が講師よりいい設備を持ってたりというのも聞きます。独立するかというのはあくまで本人のやる気と自信の問題。ただ吹きガラスだと親の援助なしにスタートするのは相当厳しいかも。お金貯めてたら人生のいい時間それで終わっちまいますから。一回だけの人生一発覚悟を決めてやるしかありません。まっ彩でレンタルというのもすごくお勧めですが(営業です)。
吹き工房を設立し、窯に火を入れると待ったなしでランニングコストが圧し掛かってきます。それで教室とか体験とかで、手っ取り早く日銭を稼ごうと考えがちですが、本来作家として立つつもりでガラスを始めたはず。なるべくは作品を売って経費を出していく本来の作家の在り方を見失って欲しくないとは、伊藤のこれからの若者に対する願いです。伊藤も最初の10年間は作品だけで生活してきました。その時の夢中になって毎日制作に集中していた経験が今にして思うと理想的な生活で、自分の唯一の財産だったんだなと実感します。

こて板
彩は安いベニヤ合板をばんばん使い捨てします(外人も感心してたぞ。今や世界に広まりつつあるかな?考案者?の伊藤は自慢)が、本来は燃えにくい樫の木なんかです。使用方法は底当てや、口当て(平らでなくなった板は使わないように)、他にもいろいろですが、一番は腕カバーでしょうか。カバーする時は吹き手の視界をなるべく遮らないで、しかも腕が熱くならないように角度を考えましょう。2度巻きぐらいの器だったらカバーして見えないくらいなら、しない方がいいと思います。アボリなんかの平らだしはベニヤじゃマズイので、黒檀とかの硬い木がいいかもしれません。

個展
作家にとっては晴れの舞台です。自分の世界を構築できるかが大事。自分一人だから全責任がかかるし(グループ展だと自分が頑張らなくてもいいかなという甘えが出てしまう)。会場の雰囲気を押さえつつ、どう構成したらいいかまで考えるといい個展になります。個展は本人の本当の実力がすべて見えてしまうもの。一発狙いのコンペとはそこが違います。吹きガラス作家の場合勢いで作るので、個展が近づいてどうテンションを上げていくか自分なりの作戦が必要かと。

コバルト
ごく少量で青く発色させるので経済的な金属です。日本人は青とか緑が好きな人が多いそう。

粉引き
陶器のをもじって伊藤が勝手に命名しときます。パウダーを降り掛けて、そのまま金属などで引っかいて(粉を掻き出すようにします)絵などを描きます。金ブラシなどを使うと筆のようなタッチ。気軽に文様などを表現出来、テクもいらないので、初心者にはお勧めです。注意点はコントラストがはっきり出るような(下地とパウダー)色の組み合わせを考える事。

梱包
ガラス作品を梱包するのは、けっこう面倒。仕方ないのでやりますが。売れた作品は薄紙で包んでから、プチプチのエアパッキンでさらに包む。危ないヶ所は何重かに。さらに、お高い作品は桐箱に入れます。勿論毛筆サインと判子(伊藤は昔母親に彫ってもらったのと、中国の有名な書家に彫って貰ったのが自慢)も忘れずに。どこに書いてもいいわけではなくそれなりに形式がありますから気をつけて。安い作品ですと箱は用意しないようにしてます。以前は全て木箱入りでしたが、すごくエコロジーじゃないし、中身より箱書きを喜ばれても嫌だから反抗する意味でもやりません。ただお高いのですと、本当に割れてしまっても困るから用意しますが。桐は反って割れたりしにくいのがいいです。モミですと乾燥するとすぐ割れたり反ったりして保存がききません。汚れたら消しゴムを使います。自分で輸送する場合は新聞紙がほとんど。梱包は性格が出てしまう。雑な男性スタッフには任せないようにしてます。


竿元
ガラスを竿に巻きつけます、その竿の上のガラスを竿元といいます。竿をあまりガラス中に突っ込みすぎてもいけません。最初は2cmかもう少しぐらいだけにします。そのガラスの巻き線がガタガタしてるというのは、ガラス中の一定の深さでちゃんと竿を1回転以上していないということです。この場合片肉の原因にもなります。次の上タネは1回目と同じ以上の深さまで突っ込みましょう。そうしないと口周りの温度が上がらないので。何回もガラスを巻きつける大物では竿元の重さもバカになりません。その場合、巻いたらすぐに竿元のガラスを絞ったりすることもあります。竿元のガラスの不均一は口元の肉周りに影響を与えるので注意しましょう。
使い終わった竿元は透明だけのガラスと分別します。溶解で竿元を沢山混ぜてしまうと暗い緑がかったガラスになります。器を横から見てもそれほど気づきませんが、上から口肉を見てもらえばガラスがどのくらい緑なのか、品質が分かると思います。


竿まわし
マーバーがけする時、タネ巻きする時、吹く時、それぞれに合理的な竿の持ち方や手の動きがあります。まずはかならず上手な人の真似をして、その動きを身につけましょう。上手くなるということはただ器用になるということではなく、無理な動きをしないで、やりやすく(合理的に)動けるようになるというだけのことです。吹きガラスはスポーツするアート。体育会系新人は素振りから入るように、基本は体で覚えないといけないことがあるのです。カルガモ親子のように最初が肝心。変な癖をつけると一生直りませんから(伊藤も学生の頃、野放し状態であったのでもう治らない変な癖があります)理屈が達者になっても手が動かなければやっぱりただのヘタ。

作家
ガラス作家なんて気楽に言ってますけど、作家ってどういう人のことなんですか?どうしたらなれるんですか?とは素朴な疑問。別に社会的法的立場があるわけでもないのであくまで自己申告です。名刺にガラス作家と刷れば、ガラス作家。そんないい加減でいいのかと言われそうですがそんなもん。ガラス作家とはガラスを作ることに人生を費やす決意をした人の生き方のスタイル。
作家と名乗る以上、習い事や趣味の人ではないのですから、他の先輩作家や外国の作家の真似で終ることは残念なことです。たとえ影響されたとしても自分なりに消化していくうちに自然に別のものになっていくはず。そうなれば誰にも真似とは言われない。あーパクッちまったななんて作家は実はけっこう沢山います。むしろ圧倒多数派というべきか。ギャラリーやお客などの素人さんは知らないから幸せですが、同業の者としては、その作家の能力の限界を見せられたようで、なんとも言えない寂しさが残ります。
作家としての自信が本当に持てるようになるのは、売れる売れないとか有名とかより、堂々と自分の独創的な作品が生まれた時。そうならなければ作家としての存在価値が疑われます。それがいつ来るのか?それは本人にも分からない。学生時代からの人もいるし、50過ぎて飾箱作った藤田さんのような大器晩成型の方もいます。とりあえず諦めないでやり続けた人だけが残る。
元々ガラス作家は夢を売る商売。表現する事の切迫感に悩まされる日々です。そこは絵描きと一緒。生活の保障や、世の中に必要とされる一定の需要があるわけでもない。売れる売れないは自分の中の夢と技量が全てなのです。それにも増してガラス作家が大変なのは表現する為の膨大な技術の習得が欠かせない事。経費もあり得ないくらい。憧れでどうにかなるものではありません。
ギャラリーやデパート関係の方がある人を作家として見極めるポイントは、存分に制作出来る環境を自分で持っているかと、本気で作品を売っていきたい人なのかという点につきます。当然ながら副業(先生など)をやっている方は、むしろ戦力外対象でしかないので、勘違いして自慢しないように。もしくは話さないほうがマシであろう。

酸素バーナー
吹きガラスでも酸素バーナーはよく使います。高温に焼けるのがいいところ。火口をガラスに近づけすぎるとガラスに油膜ができたように黒ずみますから注意。ポンテ跡の処理だけではなく、合体技や穴開けなど、部分的に早くあっためたい時にも有効です。ポイントで攻める時に使うのが酸素なら、そんなに高温にはなりませんが幅広くあたためたい時は通常のプロパンバーナーを使います。いちいちライターで点火するのも面倒なので、自動着火のタイプがお勧めです。
勿論パイレックスの講座ではすべて酸素バーナーですし、普通のソーダガラスもここれでないと早く熔けないので、ダルマのないバーナーワークでは必需品です。エアバーナーで通用するのは佐竹やネオン管などの低溶融ガラスです。世界的にはバーナーワークは酸素を使うのが普通で、エアバーナーでとんぼ玉というのは、日本独特。


サンドキャスト
湿らせた砂を凹ませて、そこにガラスを流し込む技法です。凹ますための原型と砂型作りにほとんどの時間を費やします。傍から見てると砂遊びしてる子供に戻ったかのような。要するにガラスの鋳物みたいなものと思ってもらえれば。有名な作家としてはスウェーデンのコスタボダのデザイナーでもあるガラス界の巨匠バリーンの船でしょうか。あれを超える作品を作れるかどうかがこれからのサンドキャストの未来だと思う。彩では昔、必要な道具を揃えて日本では唯一のサンドキャストの講座を開いていました。彩のガラス溶解量が巨大だったので可能だったわけです。その時にいろんなノウハウを蓄積しました。その成果は、その後のサンドキャストのメンバーの活躍でご覧いただけます。よかったリンクをご覧下さい。

三徳工業
ほとんどのスタジオがここの原料を使用しています。Aスキという亜鉛が多めに入ったガラスは彩をはじめ、全国のスタジオのほとんどが採用してると思います。ねばりがあって綺麗なガラスだと思う。もう少し膨張係数が低いといいのですが。?ホームページには全国のガラス工房の情報もあって充実。いつか皆さんも独立したらお世話になるかも。

サンドブラスト
砂を高圧で吹きつけて、ガラスを削りだす技法です。吹きでは外被せしておいてサンドしてからピックアップとか、吹いたものを単純にサンドするとか、とりあえずは度々使います。吹きの工房ならほとんどは加工の設備の一つとしてあるものです。
機械はサイフォン式(底にたまった砂を吸い上げる方式)循環式(砂を強制的に循環して使用)直圧式(砂に直接圧力をかけて強く吐き出させる方式)などいろいろあります。サンドブラストの第一人者の青木さんなどは部屋全体が箱のようになっているそう。最近は安い外国製の機械もあるし、自分で作ろうと思えば出来なくもないです。ノズルが消耗品なのが痛いところ。それよりコンプレッサーの馬力が欲しい。特に直圧でない方式のサンドブラストの機械はちょっとした遊びでも2馬力は最低いるかな?結局馬力ないとコンプレッサーが回りっぱなしになり圧も落ちてきます。ホームセンターなどで販売してる怪しげな安物はガタガタと騒音が難点だし、耐久性も全然ない。都会の一般住宅だと厳しいかも。静かなスクロール式のコンプレッサーがベスト。パッケージ型ですと少し安くなりますし、音も剥き出しよりは静かです。要は価格順。高くても、国産の一流メーカー品を購入されたほうが何倍お得と断言しておきます。
サンドをせっかくするなら、外被せくらいの生地にやってもらいたいです(彩でオリジナルの器の制作依頼いかがでしょうか?営業です)。
ところで、サンドブラストはお手軽なせいか、それで商売されてる方が沢山いらっしゃいます。それだけに差別化するのも難しく、大変だろうなと。個人的にはお教室の定番ガレ調のランプシェードなんかは、もう飽き飽き。もっと現代の作家らしく何かあるだろうにと思ってしまう。



シアトル
ワシントン州(アメリカの北西にある)、アメリカのガラス作家のメッカです。日本人にはイチローのマリナーズの街のイメージか。ピルチャックができたことで若いガラス作家がそのまま定着するようになった。毎年増え続け、現在は50以上(200とも言う人もいるけど)の工房が集まっているそうです。しかしながら激戦区なので生き残るのはそれなりに大変らしいです。日本人もほとんどいないとか。アメリカでもシアトルとニューヨークの方では雰囲気がまるで違う。日本でもシアトルみたいな場所が出来ると観光的には相乗効果で良いと思いますが。小樽とか伊豆の賀茂村とかいろいろあるけど、もう少しまとまっちゃうといいかも。皆どうかな?ガラス村なんて。

下玉
竿に最初に巻きつけるガラス。それに少しブローして冷ましてから(冷やしすぎても、あったかすぎてもいけません)、また上タネを巻き付けます。これが片肉だとその後にも影響が出てしまう。下玉はなるべく多めにガラスを巻いて(少ないとすぐ冷えちゃって難しくなるから)、上タネは絞り気味がお勧めです。

ジム ムーア
アメリカの道具屋さん。一揃いいろいろな吹きの道具があります。値段は安めで、ものもそれなりの印象。事務はしっかりしてて好印象です。これでもう少しジャックなどにカチッとした剛性感があって、シナシナしないと、申し分ないのですが。最近は道具の種類が増えているようです。

就職(若者へ)
ガラス工房に就職を考えてる若い人にアドバイス。面接に行く時は履歴書と作品集も忘れずに。必ず連絡してから行きましょう。それもないようでは常識が疑われるのでまず無理。面接では、本気なんです!なんてやる気を見せるのは誰しもですから、それは特にポイントにはなりません。そんなことより協調性があるかどうかとか、地道に仕事としてコツコツとやってくれるかや、即戦力になるかがオーナーの知りたいところ。そこのオーナーや工房の作品や仕事ぐらいは知らないと話になりません。面接はお見合いみたいなもの。お互い気に入って成立するものです。
お金を貰いながら勉強したいというのはそれが間違っているのではありませんが、本来企業はひたすら利潤を追求する為に活動しているのであって、新人に勉強させてあげる為に存在しているわけではない。そのへんお客の立場の学生と勘違いしちゃダメです。また学校でガラスを学んできたといっても、それは基礎レベル。就職したからといってスグに華々しく活躍出来るなんてことは夢でしかなく、下働きからスタートして、まず周りから信頼されるようになることからしか始まらない。教えることがあってもそれはあくまで仕事上必要だから教えるだけのこと。先輩は何度も同じ事は言わないかも?後はいちいち指導されなくとも自分で仕事を覚え考えて進んでいけるかが仕事の能力です。これでも相当新人には甘く接してくれる先輩方も我慢には限度がある。将来的に戦力にならないと判断されてしまうとクビになるかもです。サラリーマン社会にはサラリーマンの掟があり、学生気分が抜けない方、短期間で転職を繰り返す人、結果的に性格的に就職に向かないと自覚させられた人はさっさと独立の道も考えましょう。それはそれで自己責任という、やりがいいっぱいなお勧めの生き方です。

ジャック
ハシのこと。いろんなタイプがあります。一般的にはスタンダートジャック、ゴブレットなんかだと直線的で刃の細めなカップジャック、ゴブレットジャック、大きな作品にはラージタイプ、ラウンドジャックという刃が丸い断面のものもあります。ものとしては、しっかりしてるのが大事。シナシナして噛み合わせの悪いのはダメです。また刃の形状はすごく大事。昔は、日本製のイギリスタイプのハシが一般的でしたが、今はベネチアンタイプの形が一般的になりました。いいものが少ないので伊藤もいろいろ自作したりしてましたが、本来なら文句なしで安価な国産の道具屋さんが出てきていいころです。ステンレスなら錆びなくていいと思うのですが、何か問題あるのかな?

硝酸銀
銀はガラス中で失透しやすく、様々な色の変化をもたらすので、こうした薬品を使うこともあります(手に付いたりすると黒いしみになってしまうので女性は注意してください)。塩化銀よりは安いのでお勧めです。使い方はいろいろ。伊藤もテキトーにやってみてます。皆さんも実験してみることは楽しいかも。外国の作家によくあるような不思議な色の作品はほとんど銀による発色です。試薬屋さんで販売してます。薬品の種類によっては判子が必要な劇物もあったりして。Dコースで学びます。

職人
ガラス職人さんとはガラスのプロフェッショナルのこと。ガラス工場の現場は3Kどころか5Kか。昔は金の卵(若い人は意味分からないかな?)などの中卒がほとんど。そうして叩上げの超絶的名人になるわけです。今は全世界的にそうした最後の名人はもうおじいちゃん世代。その技術が受け継がれていけてないのはガラス界の大問題です。その名人技を次世代に繋いで行くことより目先の金儲けに走り、職人を大事にしてこなかったことが、最後には中国製にやられてしまった今日の結果を招いたとも思う。
ところで職人を何年か経験した後、独立して自分の工房を持っている方は実は沢山いらっしゃいます。数千円の実用的なガラスを堅実に作っています。そうした方々は自分の作品に名前を入れないのが流儀。民芸運動の影響もあると思いますが、あくまで民衆が実用に使うガラスを作るだけの一職人でありたいという、すがすがしいまでの決意があるからです。半端なガラス作家には耳の痛い話です。

真鍮
真鍮は銅と亜鉛の合金です。よくあるエスニックの食器なんか(くすんだ金色の)がそうです。普段はあまり使いませんがあの独特の柔らか感が好きです。バックの金具なんかでアンティーク風にも使ってます。ガラスではごく細い真鍮線を付けて上ダネを巻くと、熔けて黄色い泡を発生します。線に沿って発泡するので、糸引き納豆の小さいのに見える。すこしでも線が太いと泡は黒っぽくなってしまうので注意。真鍮が焼けるとニンニクの臭いがすると皆さんは言うけど?
ところで銅や銀自体強力な殺菌作用があるので、合金もそうなります。10円玉なんかに触れてる雑菌は死滅してしまうそう。実は清潔だったんです10円玉。そんな理由(臭いと風邪?菌対策)で彩特製の吹き竿も真鍮のマウスピースにしてあります。



吸い口
チロリや急須などは筒状の吸い口があります。液体がこぼれないようにある程度器の上部にまで伸ばします。作り方は主に2方法あって、タネを付けてからブローして(パファーなどでも)そのまま引っ張り出す方法(従来の綺麗な形になります)と、タネを付けたポンテ竿をそのまま本体にめり込ませて、ゆっくり引き出す方法です(タネを付けた部分が広がってしまうのが残念)。この方法はブロー出来ない場合には有効です。どちらにしても本体が肉厚ですとタネが冷えてしまって成功しません。タイミングも大事ですし、コツを掴むまでは練習です。詳しくはBコースなどで説明しております。

スタイナー
アメリカの道具屋さん。アルミの型やアルミのプファーなどはここで購入するしかない。最近は以前にも増して事務がルーズになり、注文を無視することも当たり前になりつつあります。日本人差別してんのか?と思いたくなりますが、単にいい加減なのかも。


スタジオグラス
アメリカで始まった新しいガラス工芸運動。自分で作り考えるという今ではごく当たり前のことですが、ガラス史的にはリトルトンという方が実験窯で吹きを始めたことにスタートする今世紀60年代に始まった画期的な出来事でした。ガラス制作の場が企業から個人レベルへと移行したわけです。80年代にアメリカではピークに達しており、一時は70を越える学校でガラスを教えていたそう。当時はいろんなテクニックがお目見えしたり、ガラス工芸の領域はどこまで広がっていくのだろうとわくわくさせる何かがあった。現在の状況というと、それほどでもないのですが。ムラノの伝統工芸的な技術を吸収しつつ器的な工芸に回帰する方向や、絵画的要素を重視する方向、ミニマル的にガラスパーツを反復することで大きな作品にする方向、もうガラスは一部分で充分とか、他にもいろいろあって現在は人それぞれって感じ。
ただ日本の場合は陶芸や民芸運動の影響が強いように感じます。アメリカのような色に溢れたものや、ダイナミックな造形は少ないのですが、欧米の技術を吸収しつつ日本的スタジオグラスのスタイルが開花することはこれからかも。
伊藤は古典的な、作品が外界とは自立して成り立つ作品が好きなので、実はインスタレーションとか、パフォーマンスとかは一時のお祭りにしか感じないので嫌い。0000みたいで見てて恥ずかしいのは伊藤だけ?時間を経ても耐えられるような永遠に続くものに憧れる。(音楽や舞台は勿論別ですけど)。
ただ、どんな傾向のガラス作家であってもガラスってだけで伊藤は興味が尽きない。難しいガラスって素材に執着し、可能性に挑戦する楽しみこそが逆に皆のパワーの源になってるようにも感じる。そこの暗黙の了解こそスタジオグラスムーブメントの真髄かと。


石膏
吹きガラスでは型吹きの材料の一つとして使用するくらい。キルンの作家は毎日が石膏まみれですが。他には吹いてる途中に例えば取っ手の位置決めの目安として、ガラスに印を付けるのに使ったりします。キャストの場合、石膏型にいきなり熱いガラスを流すと、瞬く間に大発泡してしまいます。石膏中の水分のせいだとも思えますが、かなり湿気抜きしても発泡したりすることもあり、?です。誰かそこのところ詳しく教えてもらえんでしょうか?

接着
ガラスではどうしても接着しないと出来ない造形もあります。板ガラスの作品や大きなオブジェなどはほとんど接着に頼るしかありません。アメリカの作家なども気軽にやってます。伊藤も10年前くらいまでは接着で大きなオブジェなども作っていました。ただ、接着剤の歴史は最近のことなので、接着した作品がはたして何十年単位ではいつまで保つのかの疑問は消えない。(紫外線やその他の過酷?な環境に有機系のものがそれ程耐久性があるとは考えにくい)。納品したあの大きなオブジェ割れてたらどうしよう?などと不安になって今は溶着しかやりません。
伊藤は接着が好きではないので、それほど詳しくありません。透明なガラス同士では、紫外線で硬化させるタイプのものを良く使います。フォトボンドとかダイマックスとかベネフィックスとかいろいろなメーカーのものがあります。このタイプは接着の平面がしっかり出てて、密着させることで強度が出るタイプです。手荒れに注意。ブラックライトなどの設備も必要です。すきまが多い時などはシリコン系の透明な接着剤もあります。一般的にその辺で販売されてるのはエポキシ系の2液混合タイプですか。お手軽で永久に外れないようなものあるといいのですが。伊藤もチェコの作家から頂いたオブジェ、いきなりポロッと取れたりして焦った記憶ありますが、それはエポキシ系だったようです。
特殊な方法に光学研磨接着というのがあって、きっちり平らに研磨したガラス同士を合わせて徐冷くらいの温度にすると成分の相互拡散が起こって一体化してしまうというのもあります。またインジウム箔を挟んで同じように温度を上げても一体化してしまいます。

セラミックファイバー
この断熱材があるおかげで、ガラス窯は随分省エネですっきりになりました。使ってない時代はレンガ積みだった。現代のガラス工房はこれがないと厳しいかも。耐火度によって成分はだんだんアルミナ比率が高まります。綿状のもの、紙粘土みたいの、クロス状のもの、板状のものなど、施工場所によって使い分けます。ただし、過酷な高温にさらされると時間の経過で繊維が収縮していくので、いつまでも使えるわけではありません。そこが辛いところ。ただ、ある程度耐火性があって、断熱性もあるとなるとこれしかないわけです。ガラス中に落下すると、透明な筋状の脈利となりますから注意しなければなりません。値段はそれなりに高いものなのですが、スタッフは分かってないかも。
窯の設計や築炉って実はけっこう面白い作業。女性は苦手な感じですけど。


セリウム
酸化セリウムの黄色い粉は最終仕上げの研磨剤として使用します。研磨に使用してるのは純度がそれほどでもないので茶色ですが。水に溶いてフェルトに付け研磨します。他には色ガラスの調合用として酸化チタンと合わせると黄色に発色します。伊藤の以前の調合では、膨張係数を合わせるのに失敗しちゃいました。他にはニクロム線などに塗っておくと耐久性が増すという研究者の報告があって、画期的かもとやってみてます。実際のところは、とりあえずいい感じ?です。

センター(中心)
これが何年やっても見えてこない人どれだけ多いことか。はっきり言ってセンターが見えているかどうかが、技術的に素人と経験者との境目です。これがとれないとはっきり言って一生、端正なものは作れません。出来ちゃった味わい系で頑張るしかありません。だからこそ一日でも早く目覚めて欲しいです。どう教えたらすぐに目覚めの時が来るのか?それは伊藤が吹きを人に教える以上いつか解決しなければならない問題です。
ガラスが回転している時、上下動するということは、あきらかにセンターがずれているということです。ガラスが上に来たところでちょっと待ってセンターに合わせたら、そのまま一定速で回転していればいいだけのこと。一秒でも回転を止めるとすぐにガラスは垂れて、センターも狂うので、あくまでまわし続けている状態が平常状態ということです。また、いつでもずれたら修正しつつ竿回しします。竿の回転を止めるのは特別な時だけ。人間は意識がいろいろと他に向かうと、いつしか左手の回転はお留守になりがち。道具を掴む時、ブローするために竿を持ち替える時、アシスタントの方を見てる時、ブロー台に腰掛ける時、竿は一瞬たりとも止まってはいませんか?意識が別にあっても勝手に左手だけは竿を回してるような癖をつけましょう。竿回しもスムーズでないとですが。ぎくしゃくしてる人は竿の持ち方やまわし方が間違ってる可能性もあります。上手な人のを参考にしてください。



外被せ
オーバーレイと同じ意味です。詳しくはそちらを。クーグラーなどを分厚く使用したい時は要注意。市販の色ガラスメーカーのものはほとんどが膨張係数が低いので内被せや中間層に有る時は割れる危険性が高まります。一番外層にある時は厚くても大丈夫です。中間層で割れてしまうなら、なるべく膨張係数の近いものを使うといいです。(膨張係数の小さいガラスは外だと割れにくく、内だと割れやすい。膨張係数の大きいガラスは逆。覚えましょうね)

ソリッドワーク
ソリッドとは塊のこと。吹きガラスは基本的にブローしたものですが、これはポンテ竿でつくることです。代表的な作家はムラノのピノ シニョレッタさんとか(伊藤は彼のワークショップを2回も受けましたが、ぜんぜん覚えてないです)セグーゾさんとか。ムラノは薄いゴブレットが得意なだけでもなく、こうしたソリッド系の作家と技術を持っていることは見逃してはいけません。器じゃないので作家のガラスに対する瞬間的な造形力がそのまま出てしまうのが恐ろしいところ。具象だとどうしてもお土産的だったり、玩具的になりがちなのですが、(伊藤のひよこキングなんかはそう。ピルチャックなんかでも一時期そういったものが多かった気がする。)そうではないアートとして繰り返し鑑賞に耐えられるものがホットワークだけでどう作れるかは僕達吹きの人間の課題。ある程度抽象化させるしかないかも?削ったり、サンドしたり、接着も面倒。そこまでやるならかなり緻密な表現も可能ですが。バーナーワークならもっと細かな表現も出来るし、パートドベールならいつまでも粘土でいじれる。


耐熱ガラス
耐熱ガラスとは熱膨張の少ないガラスのことを指して言いますが、具体的には硼珪酸ガラスのこと。パイレックスとも言ってますがこれは正確には商品名です。ガラス中に硼素が多く含まれると、膨張係数が低くなります。それで熱変化に強いガラスとなります。といってもまったく熱膨張しなくなるわけではないので(膨張係数32くらい)割れることがないとは言えません。また作業中の歪が取りきれていない場合(特に接合部のなじませが悪い場合)硼珪酸ガラスであってもビシビシ割れます。さらに特殊な工業用ガラスでは石英ガラス(膨張係数5、4)もありますが、これは2000度くらいまで上げて溶融するらしいので一般的に工芸品として作ることはまずないようです。よくお茶碗なんか欲しいなんてお客に言われたりしますが、その場合、こうした耐熱ガラスで作らないとです。普通のガラスは熱湯を入れるのは危険です。伊藤も昔お茶席で見事に割れた実体験があります。それでもお茶碗売っちゃってる作家けっこういますけど。最近耐熱ガラスの吹きというのも聞きますが、たぶん膨張係数は普通のガラスとの中間あたりではないかと思います。今度詳しく調べてみますが。
昔は耐熱ガラスというと色を付けることが出来なくて、もう一つ不人気でしたがノーススターなどの色ガラスメーカーが出てきて
最近人気となってきました。普通のエアバーナーなどではぜんぜん溶けないので、より高温になる酸素バーナーを使うことになります。彩でも講座が開かれています。ぜひご参加ください。

台ひろげ
台をつくる時の便利な道具。彩のは伊藤の自作したのが多いです。ステンレスの蝶番を利用して溶接して作りました。茶ボールという紙(すぐに水が浸透するのでやりやすい)を挟んで使用します。昔は新聞紙を折り曲げて台ひろげする作家も多かったです。シャープなのは出来ませんが、とろっとした肉厚の味わい深いのが作れます。他には木の台ひろげもありました。消耗品ですが滑りがいいので、上手でない人もなんとかなります。まだ上手く出来ないのはエッセムで販売してるグラファイトの台ひろげ。ひっかかってしまって?です。なんか特別なコツがあるんだと思う。
まず、座は数ミリでも揺れないようにしっかりとセンターに合わせてください。助手は台タネはなるべく温度を高くして持って行きましょう。座に付けるには横からや、垂らしてなど、いろいろな方法があります。適量付けたらタネが均等になるように調整しつつ、すばやくしっかりつぶします。そしたら台ひろげで回転しつつ締め付けていきましょう。台ひろげの凹んだところを座にぴったり当ててください。台ひろげする時は手の感触で伝わる情報も大事です。慣れるには練習あるのみ。詳しくは講座で。これでワイングラスも作れるようになり、ぐっと作品の幅が広がるはず。


ダイヤ
指輪につけるピカピカのではなく、研削用のダイヤについてです。ご存知の通り、ダイヤは一番硬い物質。ガラスを削るのに一番便利なものです。削る際に必ず頭に入れておいて欲しいのは、圧力がかからないと削れないということです。ですから点や線で削るなら、ガラスに押し付ける圧力はすごくかかりますが、広い面積を同時に削るのは圧力がかからないので、時間がかかります。平盤ですと砂の場合はガラスに勝手に噛んでくれますが、ダイヤは圧力次第。ですからダイヤ用のモーターは馬力のあるものでないと使えません。こうした特性を理解していないと、ダイヤの使い方は上手にいきません。平盤である程度の厚みまでザクザク削り落としたいなら、まず平盤の外側の角を使ってガラスをスライドさせながら、線で削り落としていきます。それから本当の平面を盤の上でだします。強く押し付けている方向が沢山削れます。これで、ダイヤ研削が圧力次第なのが分かると思います。水は必ず忘れないように。ガラスは砂や異物などが付いていないように、毎回洗います。そうしないとダイヤ面が荒れて使えなくなります。あと縦まわりのダイヤは取り外しで落とさないように。ぶつけたりすると使えなくなる場合もあります。(あんなものでも1個10万円もしますので)。

ダルマ
ガラスの再加熱用の炉。中の温度はだいたい1200度くらいです。こうした高温領域ではガラスの加熱において放射伝熱(真っ赤に焼けた炉壁からの受熱)がほとんどの比重(10倍以上)を占めます。すごく小さなガラスなのにバーナーワークで直接炎にあぶってもガラスがなかなか暖まらないのは(炎の流れが直接触れることでの加熱を対流伝熱といいます)その為です。ダルマに慣れてるとあったまりの悪さにいらいらしてくる。バーナーもダルマ作るといいかもと思います。部分焼きは出来ないから意味ないか?
ところで彩のダルマは伊藤のオリジナル設計でして、どこにもないものです。扉に角度をつけて密着させるのは炎の漏れがないので燃費いいはず?扉が温度の境目になり、かなりメリハリを付けて焼ける。ほとんどの工房の観音開きの扉のダルマはアメリカのスタイルを真似したもの。どうしても炎の漏れが多いのが好きになれません。以前はエアシリンダーを使った半自動扉も流行ってましたが、今は少なくなってしまった。もっと画期的な無段階スライド方式のダルマの扉も軽井沢では完成させました。材質はほとんどはセラミックファイバーです。吸音効果も期待出来るし、昇温もすばやくなります。ライトキャスターですと、共鳴音が出たり昇温にも時間がかかりますが耐久性はあります。詳しくは専門的すぎるのでこれくらいに。

タングステン
金属のなかでもっとも高温に耐えるもの。非常に硬い物質でもあります。研削用の超硬刃物や電球の発熱体に使用したりしてる。そんな安いもんじゃないです。穴で書きましたように、真っ赤に熱してガラスを突き破るのに使用したり、ガラスを押し込んだりするのに役立ちます。

タンブラー
コップのこと。彩では吹きの最初にこれの練習からスタートします。直線的でシンプルだから歪みに気づきやすいので練習向けと考えています。けど、真っ直ぐ作れる人はそんなにいない。いつまでも練習じゃ吹きが嫌いになりそうだからお鉢に移行していきますが。
タンブラーとは元々たおれるとかおしたおすという言葉から来ています。元々古い土器なんかやリュトンなんかは先が尖ってて置く事も出来ませんでしたが、当時は平らなテーブルがなかった時代ですので土に挿すか手に持っているしかなかったから尖っててよかったみたいです。(つまり我々の現代のガラス器は平らな面があるという前提でもの作りしているわけです)で、底を平らにしたのがタンブラー。何でも飲むことに使用される便利な器です。そば猪口みたいに低くて安定感のあるのがオールドファッション。酔っ払いでもひっくり返すことのない定番です。飲んでると何やら高尚な考え事をしたくなるじーんとくる風情があります。洗うのに指先が底まで届くし、そうめんのつゆも入れたりして(伊藤だけ?)一番実用的なんじゃないかなと。
こうした器のサイズを決める目安はあくまで人間が片手で持ちやすいかどうかです。径は90mmを越えるとタンブラーとは言えません。60mmくらいが一番扱いやすいかも。例えば缶飲料の径は65mm。デザインの参考にしてみましょう。


チフリ
デイルチフリさん。アメリカスタジオグラス界の大親分にして最初の人間国宝。ピルチャックの創設に貢献した方。めちゃパワフルで大作をボコボコ量産してます。シーフォームなどの作品はとても有名です。伊藤は日本に制作に来られた時ちらっと拝見いたしました。海賊のボスって感じでどう見てもかなりのワルにしか見えない。腕自慢のスタッフにガラスを吹かせて本人は最後に登場してコテでちょこっといじくる。残念そうなスタッフとは対照的に本人は得意そう。踊るポンポコリンって感じ。昔は自分で作ってたそうですが交通事故で片目を失ってからはデザイナーになりました人間的にはいろんな噂を聞きますが、何れにせよアメリカでは突出したビックな存在には間違いありません。彩に講師で来られたモングレインさんはそのチフリのギャファーです。

直線
宙吹きしてて、直線のあるデザインはよくありますが、そこはビシッと出てないとです。人間の視覚は直線には敏感なのでちょっとした歪みも目立ってしまう。もし、直線がきっちり出せるならデザインもモダンな感じが可能になるし、要するにデザインの幅が広がるわけです。直線が出せない腕なら綺麗な曲線も出来ないだろうし、そのまんまな感じでいくしかなくなる。
紙リンで直線を出すのは相当慣れた人でないと出来ない。普通はジャックをあててベンチブローしてもらったり(ジャックが磨耗してるとダメですが)、板を2枚合わせた道具などを使います。花瓶など大きめの作品ならただマーバーで転がすのが楽。転がしながら助手の人に軽くブローを入れてもらうとさらにいいかも。要するに真っ直ぐなものに押し当てると真っ直ぐになるというだけのこと。ガラスは下に向けたり、引っ張れば(当然の事ながら)真っ直ぐにもなります。ですので、難しく考えずやるといいかもしれません。


チロリ
土瓶のような形状。(ちなみに上にハンドルが付く土瓶は日本からであって、通常のハンドルが横にあるものが外国式と教わった記憶があります。本当かは知りません)。通常はポンテを取らないのですが、彩ではBコースで蓋受けもあるし、ポンテ後に吸い口もハンドルも作るで一番難しいことに挑戦してもらってます。蓋受けも難しいのですが、吸い口はかなり練習しないとコツが掴めません。あまり作品では見たことがないのは面倒だからでしょうか。


鶴首
首が長くて細いものを鶴首と呼んでます。詳しくはBコースなどでやっていますが、割と一気に首を引っ張ってそのままくくりをします。首を伸ばしてからくくるようでは大変ですから。柄が入ってる場合は首のネジレに注意。ほとんどの方はダルマで時計まわりにしか竿を回さないので、柄がよれてしまってるようです。ダルマでは両回転できるように癖をつけましょう。慣れると見た目よりは簡単です。なんか上手になったように思えるような形です。あまり実用的じゃないですけど、ガラスの特性にあった造形的な美しさがありますので伊藤は好んで作ります。ポンテ後は首にハシ傷を入れないことが大事。


テフロン
テフロンとは高温に耐えるプラスティク。高温といっても数百度くらいですが。よく鍋にコーティングしてある焦付かない黒いやつもそう。使用時にスエタような臭いする時はその蒸気が出てるのでなるべく吸わないように。肺がテフロン加工の鍋と一緒になっちゃいます。熱膨張が多くてしなってしまいますからそこは注意。巻いてきたばかりの暖かいガラスには使用してはいけません。溶けてしまいます。あくまで、それほど暖かくない焼き戻しの時だけ使用しましょう。モングレインさんも愛用してたのにはびっくりしました。


現代の文明の基礎になる大事なもの。道具やありとあらゆる機械も。ガラスでは少々厄介者で、これがガラスに混入すると例の緑っぽいガラスになってしまいます。吹き竿もステンレス(鉄とニッケルとクロムの合金)ですから、竿元が混じると暗い緑になってしまう。これを目立たなくさせる為に補色関係にある、マンガンやセレンなどを少量入れることも企業ではあるようです。緑の発色用としてはベンガラ(赤い粉)を使います。浅い黄緑がかった色です。けっこう好きな色です。

鉄ポンテ
ポンテ竿を赤く焼いて、ガラスは巻かずに、そのまま器の底にくっ付けてしまうというポンテ。伊藤は噂でしか知りませんが工場などでやってたのを見た人がいます。予想するにかなり落ちやすいので慣れていないと厳しそう。

デザイン
ガラス作家にとって大変なのは、作ること(失敗を繰り返しつつも技術はやっただけ年月に応じて上達する)よりガラスのデザインを考えることです。特に吹きの場合、本人が求める完成度や発想が今以上の技術を要求するはずですから、もしそれが乏しい場合技術もそこで進化が終ってしまいます。つまり新しいデザインは新しい技術を要求するのです。チャレンジこそ楽しい。そーゆ意味でもデザインは重要。ずっと同じもの作り続けてる作家もいますが伊藤には理解不能。余計なお世話ですが。

電気炉
彩の電気炉はすべて自作のものです。伊藤の好みとしてはごちゃごちゃしてなくて冷蔵庫のようにすっきりした外観がよろしい。電気炉の存在に気づかないくらいがベスト。自分で制作する場合や市販のものを購入する場合は、電源の容量に注意してください。大きすぎて使えないなんて冗談もあります。家庭用でしたら、電灯線(100ボルト、1.4キロWくらいが限界です)で、内径30センチ角あたりがギリギリくらい。それにプログラムコントローラをつけるのがガラス作家としては絶対便利(市販の七宝用や陶器用のにはそれが付いてないのもあるので注意しましょう)。それ以上のサイズですと、200V電源のものになっていきます。W数は内部の表面積に比例しますから、計算で必要な電源量を確保します。また、何度まで、どのくらいの時間で昇温させるのかは使用技法によって違いますので、それでも必要なパワーや耐火材の種類は変わってきます。
それと貸家の方は注意。内緒ですと、大家さんにばれて出て行ってなんて話しも聞きました。
電気炉ひとつあれば、パートドベールやフュージング、キルンキャスト、エナメル絵付けなどいろんなことで遊べます。それだけで作家活動されてる方も沢山いらっしゃいます。面倒ならガラス用で実績のある市販品を購入されてもいいですし、暇とチャンスがあるなら自作してもいいかと思います。以前彩でもボランティアで電気炉自作講座をやりました。ただ、やる以上はきちんとお金貰わないと結局トラブルの元だと反省です。また希望者が多いなら考えてみたいと思います。
最近は溶解炉も電気の所が増えてきました。伊藤がちらと見るに溶解温度のせいか対流が起き難いせいか?どこも脈理がひどいように感じます。彩だと即レンタラーから苦情の嵐か?大量のガラスが必要な彩だと今のままの性能では採用するのは厳しい。ただし、学校なんかですと保安上電気が主流になってます。溶解炉の究極はジュール熱の直接伝熱か?ダルマなんかも電気のもの試してみましたが、これが思ったより焼けるんで驚きました。そのうちマジで研究してみたいと思います。



ガラスに熔けると酸化状態では軽い感じの青(彩でお馴染みの色です)、還元条件で上手くすると銅赤になります。銅赤は色ガラスでも最も発色させるのが難しいとされていて、クーグラーなんかも時々失透してたりします。伊藤はまだ挑戦したことがありませんが。薩摩切子なんかはその銅赤が綺麗に発色してますが、鉛が多いと簡単になる。ガラスはデロデロと柔らかいので、扱いが難しいです。
金のように箔でつけようとしても、加熱されると黒く酸化してしまいます。ガラスに熔け出すと青になります。ただ、厚い板や線の場合、ガラス中で真っ赤な林檎の皮のような色になり、特別な効果が出ることもあります。
伊藤は個人的になぜか銅の赤っぽい色が大好き。人間には必須ミネラルの一つです。

取っ手(ハンドル)
ビアマグとか、取っ手が付いてるガラス器は多々あります。本来片手で持ちやすい器には取っ手はないのが自然ですが、伊藤は数少ないデザインのポイントとして装飾的に多用します。制作時の注意点としては、冷えてしまわないうちにすばやく作ること。また本体の温度が冷えている場合はいくら取っ手を付けても、歪が残っていて徐冷後、境目が割れてしまうので注意。ちょっとまだ本体が動くくらいで付けます。その辺の温度管理が非常に気を使う難しいところ。ですからアシスタントがいいタイミングで持ってくること、いい温度分布のタネをもってこれるかも非常に大事です。取っ手は全体に無理のない綺麗なカーブを描いていることと、先端の処理が命です。とりあえず練習あるのみです。伊藤は取っ手の上にまた取っ手を付けたりと唐草模様が増殖していくデザインに目覚めて一時期凝っていました。

都市ガス
彩なんかの熱源は都市ガス(ナチュラルガス)です。プロパンみたいに近隣の住民に威圧感を与えるボンベもないし、万が一のタンク空っぽなんてミスもなくて済みます。地震の時は元のコンピュータが供給を遮断してくれます。そのコンピュータにぶつかって遮断弁が作動して火が消えて大騒ぎなんて何回もありましたっけ。発熱量はプロパンの約半分しかありませんが、都市部ではこれしかないかも。最近はなんだかんだで値上げしまくり。東京ガスの独占企業状態ですから、プロパンや電気と競合するだけ。電気だけで、ダルマも溶解炉も可能にしてるホヤクリスタルは衝撃的でした。伊藤も出来るならそうしたい気分。田舎ですと逆にプロパンが主流です。灯油の窯もありますが、原油の値上げにより、そのメリットはなくなりつつあります。ガラスってランニングコストが果てし無い。彩も毎月70万以上です。ため息。全国のガラス屋はピンチではなかろうか。
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